研究課題/領域番号 |
15K03024
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
渋谷 鎮明 中部大学, 国際関係学部, 教授 (60252748)
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研究分担者 |
浦山 隆一 富山国際大学, 現代社会学部, 客員教授 (10460338)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地理思想 / 風水思想 / 韓国 / 景観 / 民俗文化 / 環境知識 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究課題のうち、主として韓国における学術界における風水地理思想の再評価について明らかにすべく研究を進めた。 まず代表者である渋谷が韓国において資料収集や、関連学会・研究会での討議に参加した、特に研究協力者の崔元碩氏の助力を受け、1990年代以降の学術界における風水地理思想に対する研究状況や評価に関する資料を収集するとともに、大韓地理学会大会の特別セッション「韓国風水研究の回顧と東アジア的展望」(12月)や、「アジア風水文化研究会」(2月)に参加し、現在の韓国における学術的研究の到達点を理解することができた。 同時に、韓国の学会における風水地理思想の評価について研究を、日本との対比によって明らかにするアイデアを得、これまでの日本における風水地理思想研究を整理検討し、その方向性を追求した。その成果は、上述の大韓地理学会において澁谷が「日本の風水研究の回顧と東アジア的展望」(韓国語発表)を報告した。さらには、本研究課題に関連して沖縄本島にて開催された「第3回風水ワークショップ」において、研究メンバーを含む日中韓の研究者と各地域における研究の到達点や動向について学術発表、討議を行った。その成果の一端は、韓国で刊行された学術書『東アジア風水の未来を読む』(韓文)などに発表されている。 これらの研究活動を通じ、今のところ韓国においては、1994年時点でも学術研究そのものに関する批判的見解がある中で、風水地理思想の学術的研究が歴史学・地理学・建築学主導ではじまり、後に不動産学分野等の実学的分野が付け加わり、現在まで非常に活発な研究が行われている。これは背後に占いとしての実用性を視野に入れる「在野」の風水研究が行われていることとも無関係ではないと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
韓国における研究協力者である慶尚大学校・崔元碩研究教授の助力を得て、資料収集は極めて順調に行うことができた。特に一般には公刊されていない報告書やプロシーディングスを多数入手できた。中でも特に2006-2014年にかけて漢陽大学校で毎年行われた研究集会の記録である「風水大討論会統合論文集」や、2016年度に研究を行う予定の、行政機関の事業・活動と風水地理思想の利用に関する資料(「風水環境都市計画樹立学術研究事業」等)も複数入手できたことは大きな進展である。反面、韓国語で記された資料が多すぎ、読み込みには時間を要している。 さらには、韓国で行われている風水地理思想関連の研究会への参加、大韓地理学会での研究発表、さらには代表者の澁谷が運営委員長として実施した沖縄での国際研究集会を通じ、分担者の浦山、連携研究者の鈴木、協力者の崔元碩を含め、本年度の研究目標である「現代韓国における風水地理思想の学術的評価」については、かなり議論を深めることができた。 また、上記の国際集会の成果を基盤として、2016年度より学術振興会二国間交流事業(韓国との共同研究)が採択され、これと合わせて本研究課題においてもさらなる研究の進展が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、おおよそ申請時に計画した、現代韓国の行政機関の各種事業・活動と風水地理思想の利用などを中心とした研究内容に沿って推進したい。また、昨年度にアイデアを得た、沖縄を中心とした日本の状況との対比という視点を継続したい。 ただし、前年度多数入手した、韓国語文献の詳細な読み込みと整理が終了しておらず、本年度はまずこれを推進したい。その結果は、研究代表者の属している歴史地理学会、人文地理学会などにおいて学会発表を行うこととしたい。
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