本年度は、昨年度より継続して現代韓国において国家環境政策など行政に用いられる風水地理思想の論理について明らかにするとともに、一般市民がどのような姿の風水地理思想に接しているかについて、韓国における新聞記事に掲載される風水地理思想関連の内容をを手掛かりに考察を加えた。 まず昨年度日本地理学会において学術発表に新たな研究内容を加え、論文「現代韓国における風水地理思想の学術的評価:不動産・都市研究分野を中心に」(印刷中)を執筆し、この5月に刊行される予定である。 次に、分担者の浦山および連携研究者の鈴木、韓国の研究協力者である崔元碩氏と数回にわたって研究会議を開催して上記課題について議論を深めた。その結果、韓国の行政と風水地理思想のかかわりについては、確認の限りでは、行政側は直接「風水地理思想を利用」する行為は、風水思想を「迷信」とする立場の市民も多いためか、間接的に接点がもたれているように思われる。例えば国家的環境政策である通称「白頭大幹保護法」などでは、風水と関連の深い「白頭大幹」という概念は用いるが、直接風水の術法に関連させず名称を使うに止めている。他方、大統領選挙や地下鉄事故と風水地理思想を関連付ける新聞記事は、サイドストーリー的に扱われつつ、風水地理思想の用語や概念、論理を直接用いている。これらの研究成果は、さらなる補足を行い、次年度に日本地理学会等にて学術発表の予定である。 一方、韓国との対比の上で、日本本土や沖縄風水の現代的評価の調査研究を行うべく、韓国の研究協力者と研究分担者(浦山)、連携研究者(鈴木)とともに、沖縄本島北部村落と京都市周辺の庭園において現地調査と討論を実施した。この成果の一部は、代表者の渋谷が論文「東アジアにおける風水の地域的差異―韓国(朝鮮)と沖縄(琉球)の比較から」として発表している。
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