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2018 年度 実施状況報告書

カナダ契約移民の輩出と渡航後の地域的展開をめぐる歴史地理学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K03025
研究機関立命館大学

研究代表者

河原 典史  立命館大学, 文学部, 教授 (60278489)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2020-03-31
キーワードカナダ / 日本人移民 / バンクーバー島 / ユクルーレット / カナダ太平洋鉄道
研究実績の概要

第二次世界大戦以前、カナダへ渡った日本人の就業について、先行研究では漁業、製材業や商業が中心に描かれてきた。しかし、彼らの多くは自由移民であったが、決して少なくなかった契約移民の存在は無視できない。自由移民と契約移民との輩出・受容構造の差異を導く必要がある。本研究では、カナダ日本人移民史研究が看過してきた契約移民をめぐって、20 世紀初頭における日本・カナダ両国の移民政策を背景にした輩出・受容構造、さらに渡加後の転業や再移動について歴史地理学的アプローチから明らかにする。
2019年度では、バンクーバー島西岸のユクルーレットにおける日本人開拓漁村の考察を行なった。ここではスティーブストンからの移住者は、3ヶ所の小さな入江に住みついた。それらは自然地名、先駆者や先住者の名前によって入江西岸では北から砂浜湾、濱出(文治)湾とフレーザー湾、入江東岸には清水湾と箱田湾と名付けられた。西岸の3集落には、先駆者・上山又吉のように、スティーブストンで最多数の和歌山県、とくに三尾出身者が多かった。ただし、入江東岸の清水湾では彼らの地縁関係から東牟婁郡をはじめとする三尾以外の出身者が多かった。とくに、福岡県糟屋郡多々良村(現在の福岡県福岡市東区)出身の箱田直次の住む箱田湾だけは、三尾出身者が皆無であった。彼はカナダ太平洋鉄道への鉄道契約移民の1人であった。2名の静岡県出身者も同様であり、彼らは契約満了後にサケ缶詰産業へと転出してきたのである。ただし、最大の日本人漁業者の集住地であるスティーブストンでは従事できず、バンクーバー島西岸に活路を見出したのである。
つまり、すでに居住環境が整っていた入江東岸には先駆者が居住し、三尾出身者は親日家の好意もあり対岸の西岸に居を構えた。そして、鉄道契約移民の転業など後発の日本人は、当時集落の縁辺の東岸南端に集住したのである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、(1)アメリカとかかわるカナダへの契約移民会社の成立、(2)日本における特定地域からの契約移民の輩出構造、(3)カナダにおける契約移民の組織化、(4)契約期間の終了後の転業や地域的拡散、の4点について実証的に解明することを到達目標とする。限られた期間において目的を達成するため、これまで等閑視されてきた東京移民合資会社をとりあげ、同社から多くの契約移民を輩出した宮城・栃木・神奈川・静岡・福井・福岡・熊本・鹿児島・沖縄県出身者の展開を把握する。
そのうち、2015年度では福井県を中心とする鉄道契約移民について考察した。そして、2016年度には鹿児島県からの契約移民がサケ缶詰産業に転業した事例を説明した。2017年度では、熊本県から炭鉱夫として渡加した契約移民の転業を考察した。さらに、先住の沖縄県、後から他所から転入した福井県出身者が多くを占めていた米加国境付近に位置するホワイトロックでの製材業に関わる日本人移民について考察した。
2018年度では、バンクーバー島西岸における日本人開拓漁村における鉄道契約移民の再移動・転業について検討した。ここでは和歌山県南部出身者、そして他地域出身者によって相互補完的に新しい移住漁村が形成されたことが明らかになった。

今後の研究の推進方策

今後は、日本の特定地域からの契約移民の輩出構造を把握する。外交史料館所蔵の「明治四十年移民取扱人を経由セル海外渡航者名」には、東京移民合資会社による約1,500 名のカナダ契約移民が網羅されている。すでに入手している名簿を概観すると、彼らは宮城・栃木・神奈川・静岡・福井・岡山・福岡・熊本・鹿児島・沖縄県の10 県に限定されている。ただし、出身地については県レベルまでの記載にとどまるため、同館所蔵の「海外旅券下附表」を精査し、市町村単位まで確認する必要が生じる。これらの資料には渡加目的が記されているため、炭鉱契約移民と鉄道契約移民との差異が見いだせる。つまり、特定の業種への就業種の違いを意図した契約移民の輩出構造に関わる地域性が見いだせるに違いない。事例とする炭鉱契約移民については、熊本県有明海沿岸出身者の関係者とは連絡がついているので、早急に資料整理・聞き取り調査などに着手する。最終年度の2019年度では、栃木県をはじめとする未着手の県からの輩出者についても検討を進めたい。

次年度使用額が生じた理由

(理由)カナダでの現地調査が、事情により中止せざるえなかった。そのため、海外旅費が執行されなかった。
(使用計画)2019年度には計画的な海外調査を心がけ、旅費の適正な執行を行なう。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Ship Names: Reeling the Identities of Japanese Fishermen in Canada2019

    • 著者名/発表者名
      Norifumi KAWAHARA
    • 雑誌名

      Tomoko Ozawa ed.Japanese across the Pacific and Beyond

      巻: ー ページ: 247-258

  • [雑誌論文] カナダにおける日系ガーディナーの先駆者たち(10)-新渡戸庭園の造園をめぐる森勘之助と角知道-2018

    • 著者名/発表者名
      河原典史
    • 雑誌名

      The Year of 2018 Membership Roster ,2018

      巻: 2018 ページ: 25-33

  • [雑誌論文] 20世紀初頭のカナダ西岸における日本人による漁村開拓-バンクーバー島西岸のユクルーレットを中心に-2018

    • 著者名/発表者名
      河原典史
    • 雑誌名

      立命館地理学

      巻: 30 ページ: 15-29

    • 査読あり
  • [雑誌論文] カナダへの移民2018

    • 著者名/発表者名
      河原典史
    • 雑誌名

      日本移民学会編『日本人と海外移住-移民の歴史・現状・展望-』

      巻: ー ページ: 99-117

  • [学会発表] カナダへ渡った指宿の人々 ―忘れられた指宿の歴史―2019

    • 著者名/発表者名
      河原典史
    • 学会等名
      指宿商工会議所 /いぶすき検定合格者の集い
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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