研究課題/領域番号 |
15K03026
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
鍬塚 賢太郎 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (40346466)
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研究分担者 |
秋庭 太 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (00340282)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サービス / 情報通信技術 / 産業振興 / 起業家支援 / 州政府 / 産業集積 / 南アジア |
研究実績の概要 |
本研究は,インド地方都市における情報通信技術サービス産業(ICTサービス産業)の成長メカニズムを,当該都市に立地する企業,なかでも地元出身者の起業した地場企業やその経営者(起業家)に焦点をあてながら考察するものである。2015年度は,主に以下三点について調査研究を行うとともに,その成果の一部を発表した。 第一は,起業家の事業構築に関する文献調査であり,主にインドを対象とした。当該研究は2000年代後半より増加し,その関心は経済地理学に留まらず,中小企業論やベンチャー論など多岐にわたる。本年度は,起業家の事例把握を念頭に文献収集を行い現地調査に備えた。 第二は,インド各州のICTサービス産業の現状と振興策に関する資料収集である。具体的には,デリーにて電機・ソフトウェア輸出振興協会を訪問し,インターネット非公開の統計資料とともに産業振興および起業支援策に関する情報を入手した。またチャンディーガル行政府およびマディヤープラデーシュ(MP)州政府の担当部局も訪問し関連資料を入手した。政策と起業家との相互的な関係について理解を深めるためである。 第三は,次年度以降のための現地予備調査である。チャンディーガルおよびMP州インドールにて中小規模ICTサービス企業を訪問し,経営者などに対し事業内容や設立経緯などについてインタビュー調査を行った。特にインドールではMP州政府が整備したITパークに入居する企業の協力を得た。起業にあたって,当初よりインド国外を指向する者,国内でのサービス展開を指向する者,独自プロダクト開発を行う者など,その行動にバリエーションが見られ,要因把握を新たな課題として見出しえた。 この他,インド地方都市の産業的な特徴を把握するために,インド国勢調査の就業者データを整理し,県別に産業の地域特化や多様性について考察を加えた。成果の一部は学会等で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究手法のなかで最も重要なインドにおける現地調査では,現地企業・経営者等の積極的な協力もあって比較的短期間に複数の事例を収集でき,次年度以降の本調査に備えることができたから。
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今後の研究の推進方策 |
インド地方都市において現地調査を行い実態把握に努める。具体的には,前年度までに訪問した企業および各種資料からリストアップしたICTサービス企業等に対し,調査票に基づき聞き取り調査を行う。あわせて企業経営者(起業家)のライフヒストリーや事業構築にかかわる行動についてインタビュー調査を行う。複数の地方都市において事例の蓄積をはかるとともに,デリーなどの大都市部でも資料調査などを行う。また前年度の成果を踏まえ,地理学もしくは経営学分野の研究会等にて調査結果を報告する。 この他,地方都市における起業機会の拡大を考察するうえで,当初より着目していた政府による支援策だけでなく,起業家による資金調達など財務面からの実態把握も必要なことを予備調査の結果から指摘できる。また,大手ICTサービス企業の立地戦略等も当該都市における労働市場形成に影響を及ぼしていることが予想され,こうした側面の検討も新たに必要とされる。これらの課題にアプローチするために,更なる情報収集に務めるとともに,文献研究にも引き続き取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
統計資料等のデータ入力・整理作業について新たに自動化を試み当初の予定よりも経費を抑えることができたから。
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次年度使用額の使用計画 |
データの効率的な処理を念頭に必要機材等へ経費を充当するとともに,研究手法として最も重要な現地調査でのインド国内旅費に使用する予定である。
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