研究課題/領域番号 |
15K03033
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本田 洋 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (50262093)
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研究分担者 |
秀村 研二 明星大学, 人文学部, 教授 (60218724)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 対照民族誌 / 韓国 / 農村移住 / カトリック教会 / 脱北者 / 北朝鮮 / コミュニティ / 生き方 |
研究実績の概要 |
この研究計画の目的は,韓国社会に暮らす人たちの生き方の分化・再編と交渉について,民族誌資料の収集と相互対照を通じ微視的かつ総合的な理解を深化させることにある。最終年度である平成29年度は,研究代表者・分担者がそれぞれの分担課題についての補充調査(韓国南西内陸部での農村移住者と経済活動,韓国南東部地方都市カトリック修道院の諸活動)と取りまとめを行うとともに,研究代表者が総括にあたった。本研究の主題設定に即して成果を整理すれば以下の通りである。 ①流動的・創発的な共同性と関係性:農村移住者と脱北者の事例にカトリック修道院の事例を加えることにより,生活の必要性や欲望の充足を契機として生成する創発的な共同性が,一方で国家・行政や宗教の制度と,他方で既存の社会組織と切り結ぶ関係について,分析的かつ動態的に捉える枠組みを洗練させることができた。 ②宗教活動への参与と「美しい生き方」:プロテスタント教会やカトリック修道院の事例と農村移住者の事例を対照することにより,生き方の「美しさ」とは,単に個人の審美的充足や閉鎖的な共同体内での調和的な人間関係の形成を意味するものとしてではなく,より普遍性の高い理念や公共性との関連で捉え直すべきであることが明らかになった。そしてこのような生き方において宗教活動が持つ意味合いとして,必ずしも霊的な救済のみを志向するものではなく,現実の生活世界におけるより望ましい生き方の指針となり,その追求を促進かつ正当化するものとして作用していることが明らかになった。 総括として,このような比較対照から得られた知見を巨視的な政治経済的脈絡,あるいは歴史的脈絡に位置付け直すこと,ならびに文化の越境と同時代性に着目した分析の枠組みの洗練が求められることを示した。
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