研究の最終年度においては当初、中国・広西チワン族自治区の首府南寧市と上林県、それに桐州市などで現地調査を実施する予定であった。しかし、習近平体制が進める外国人調査制限政策により、現地入りが不可能となった。その為、当初の申請書に書いたとおりに、当該プロジェクトを推進する際の予備調査地である台湾と香港において、現地調査をおこなった。具体的には夏休みの八月に台湾に渡り、国立政治大学と中央研究院に所蔵する広西文革に関する資料を閲覧し、収集した。また、台北に移住した元大陸広西出身の紅衛兵に関する情報を集めることができた。 その後、平成30年春の三月には香港に赴いて調査を推進した。具体的には香港中文大学に収蔵されている文革関連の档案史料を閲覧収集した上で、広西からの移住者に1960年代の中国政治に関する話を聞いた。現地広西入りこそ実現しなかったものの、広西チワン族文革に関する档案史料を積極的に公開してきたアメリカの研究者たちとの情報交換を進めた。アメリカの研究者の成果を静岡大学の『アジア研究・別冊』5に公開し、広西文革の実態解明に着手した。また、文革研究の成果を英文で発信するのにも力を入れた。具体的には『アジア研究・別冊』6にて、The Truth about the Mongolian genocide during the Chinese Cultural Revolutionを出版した。更に、夏にはモンゴル国で開催された「社会主義時代の粛清と名誉回復(10th anniversary of political victims commemoration)」と題する国際シンポジウムにおいても、研究成果を披露した。
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