研究課題/領域番号 |
15K03039
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 久仁子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 特任助教 (00464199)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グローバル人材 / 異文化マネジメント / 人類学 / 宗教 / モノと人間 / 時間と場所 |
研究実績の概要 |
本研究は、宗教人類学の事例研究で得られた知見をグローバル人材育成に向けた教育に活かすとともに、異文化マネジメントやキャリア教育分野に対する人類学の発信力を高めるための方法を探ることを目的とする。 平成28年度は、インドネシア及びミャンマーで展開する日系企業において、それぞれ「異文化/宗教接触」体験に関するインタビュー調査を行い、マレーシアとフィリピンで昨年度収集した情報・資料と比較検討を行った。そのうえで、企業における社員教育や新人教育に応用可能な宗教人類学的事例を精査し、執筆予定の教科書の項目を確認した。また、9月には大阪大学FDフォーラムにおいて「グローバル産学連携による人材育成(CIS)プログラム」と題し、グローバル・マインドセットの構築に必要な要素に関して発表を行った。グローバル化が進む現代社会における社会的ニーズの把握とそれを踏まえた教育環境の整備が急がれる今、宗教人類学がそれらにどのような貢献を果たし得るか、経営人類学や企業の人類学とは異なる角度からグローバル人材に必要なマインドセットの涵養について検討を行った。また、ビジネススクールがグローバル・リーダー育成プログラムで採用するフレームワーク(Mapping, Bridging, Integrating)を検討し、文化的多様性のマネジメントの仕方に対する人類学的貢献を発信するだけでなく、マネジメント自体に多様性があることへの認識を高めることが重要であるとの認識を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドネシア及びミャンマーにおいて社員の方々から「異文化/異宗教接触」の体験談を多くうかがうことができた。インドネシアのrubber timeに関するお話は特に示唆的であり、文化を異にする上司・同僚・部下が同じ部署でひとつの目標に向かって力を合わせて進んでいくために必要な「異文化理解」の在り方と、人類学が唱えるところの「異文化理解」とは一部で重なり一部ずれていることに気づくことができた。 本年度はまた、「モノの修理」に関する認識の文化的な違いがあることに着目し、勤続年数や仕事に対する責任の感じ方への影響を検討した。「モノの供養」という宗教人類学的な視点を導入することで、モノを製造し、流通させ、消費した後の二つの過程として、修理と供養を同じ地平で検討する道を開くことができた。 このように、調査研究は順調に進展したが、海外の研究者とのネットワーク構築までには至らなかった。この点を踏まえ、次年度はグローバル人材育成に関心のある海外人類学者とのネットワークの構築に尽力したいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、①論文の雑誌掲載、学会発表を通じた成果公開、②教科書の出版(商業出版)、③国際シンポジウムの開催、の3つを柱に進めていく。いずれの場合も、異文化マネジメントの現場で活用可能な実践の学として宗教人類学を展開するための検討作業を行う。また、海外の研究者とのネットワークを構築するため、イギリスのビジネススクール(ロンドン・ビジネススクール及びサイード・ビジネススクール)に出張する予定である。 所属機関が大阪大学から甲子園大学に変更になり、各種委員やオープンキャンパス等を担当することになったが、大学業務と時期的な調整をはかりながら海外出張を行い、①②③に必要な作業を進めていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、インドネシア及びミャンマーでの資料や情報の収集、精査、分析を中心に取り組んだため、当初予定していたイギリスのビジネススクールでの調査,、及び、海外研究者とのネットワーク構築に着手することができなかった。このため、イギリスへの渡航費、滞在費が使用されず、残額が生じた。次年度はイギリスで調査研究を行い、グローバル人材育成に向けた宗教人類学的知識の活用に関する国際シンポジウムの開催につなげることにしたい。
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次年度使用額の使用計画 |
イギリスの二つのビジネススクール(ロンドン・ビジネススクールとサイード・ビジネススクール)において調査研究をするための渡航費、滞在費に使用する。また、国際シンポジウム開催に係る会場使用料、招待講演者の旅費、滞在費に使用する。 これらの成果を英語論文にまとめるため、論文の英文校正費に使用する。
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