本研究計画の第一の目的は、南スーダン南東部の10以上の民族集団を横断して存在する、階梯式年齢組織と首長制・王制がセットになった「モニョミジ・システム」及びこのシステムの構成単位である小政体を民族誌学的に詳細に記述・分析することによって、長い歴史のある南スーダン民族誌に新たな知見をもたらすことである。第二の目的は、この民族誌に基づき、新国家・国民の建設における小政体の実践的な役割について考察し、さらに分節国家論と「アフリカ版ゾミア」に関する議論と接続することによって、政治人類学的研究の展開に貢献することである。 最終年度にあたる平成30年度は、外務省海外安全情報による南スーダン首都ジュバの危険度が4から3に引き下げられたため、3年ぶりに約1週間のフィールドワークを実施することができた。「モニョミジ・システム」の今日的動態に関する資料を収集し、おおきな収穫があった。あわせて、ケニアとウガンダで、主要なインフォーマントと研究者から聞き取りを実施するとともに、研究打ち合わせを行った。 2013年末以降、南スーダンの政治情勢が継続して不安定であるため、当初計画していた東エクアトリア地方でのフィールドワークは実施できなかった。しかし、首都ジュバにおける調査、およびウガンダとケニアに居住する東エクアトリア出身者からの聞き取り、さらに、現在も東エクアトリア地方に居住する人びととの電子メールと国際電話による連絡を通じて、研究期間内に十分な情報と資料は収集できたと考えている。「モニョミジ・システム」の現代的変容と、「アフリカ版ゾミア」に関する学術論文を準備中であり、来年度に学術雑誌に投稿する予定である。
|