研究課題/領域番号 |
15K03042
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
梅屋 潔 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80405894)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 呪詛 / ブガンダの文化的遺構 / バンツーとナイル / ウィッチクラフト / イテソ / ブガンダ王国 / 祟り |
研究実績の概要 |
本年度の研究は、予定通り進捗した。8月22日から9月5日までの現地調査では、マケレレ大学のエドワード・キルミラ学群長や、アンドリュー・ステート社会科学部長、そしてオニャンゴ・エリア博士などとの情報交換の後、カンパラ、トロロ、ソロティ、モロトで実施した。トロロでは呪術師へのインタビューを通じて、儀礼実践についての現代的状況を見聞した。意見交換において、ナイル系の民族に呪詛の観念が優越している一方でバンツー系の死霊概念やウィッチクラフトの観念がバリエーションに富み、時に暴力と結びつくことが改めて確認された。なおウィッチクラフト、妖術、邪術など、用語や訳語についても改めて問題にする必要性を痛感した。エヴァンズ=プリチャードが当初構想したような形での意図しないウィッチクラフトという含意はもはや一般に流通する英語はもちろん専門用語としてのwitchcraftからも抜け落ちており、witchcraftといえば、取り締まるべき邪悪さを含むことは前提とされているからである。そのことがウィッチクラフト法の議論を展開する際に検討されるべきであろう。当初予定通りのカンパラとトロロにおける現地調査に加え、連携研究者らの協力を得て、ソロティにおいてもイラミと呼ばれるイテソ民族の「呪詛」についても比較検討をおこなった。ガブリエル氏の協力で1日のみであるが今回もモロトを訪問し、マニヤッタ(マア語系の語だがカリモジョンでも用いる)見学も許可されたのは収穫であった。さらに、関連した研究として、ケープタウン大学のニャムンジョ教授、ハリー学部長代行などと共同研究の方向性についての議論を行った。またガンダ王国のムロンド王子とも面会し、昨年度同様王国の文化遺産を見学し、ワマラ墓(スナ一世の墓)の修復、カスビの墓の修復状況を見聞した。またしかるべき対応を行わなかった場合のいわゆる「祟り」についても若干の知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の中核をなす海外現地調査が予定通り進捗しているため。昨年度同様滞在期間は短かったものの北東部でも概況を知るための滞在ができた。従来からのトロロに加え、ソロティのフィールドでの関係強化が果たされたことに加えて、手薄だったバンツー系の調査地域、とくにブガンダ王国とのコネクションも昨年度来強化されてきていると考えられるので、順調と考えている。研究の枠組みについて助言を得られる範囲も飛躍的に拡大された。また昨年度のローマ・コムボニでの「発見」については、慎重に周囲に確認しているが、公表の価値はあるとの感触をえた。ただし、公表の媒体その他については慎重に検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
対象とされる事象についての新聞、雑誌などを通した資料収集は行ってきているものの、手薄となっている法人類学的問題に、専門的見地からの検討を加えたいと考えている。ウィッチクラフト法についての丁寧な分析は昨年からの継続課題として重要であり、連携研究者モリーン・オウォリなどと連絡は取り合っている。さらなる実質的な連携と議論の実現が望まれる。また、本年度に文化財と「祟り」の関連についてのより詳細な知見を得られたところから、ブガンダ王国王子、ムロンドの招聘を実現したい。ガンダ王国の呪詛について資料提供・報告できるとのことである。このことは昨年度方針として立てた、バンツーの調査の充実のひとつの方向性が結実しはじめたひとつのかたちであると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が、想定していたよりも安価であり、その差額を繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
逆に旅費が想定よりも経費がかかることも多いので旅費として用いることを考えている。
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