研究課題/領域番号 |
15K03044
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高橋 晋一 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (10236284)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 民俗学 / 祭礼 / 船だんじり / 文化史 / 山車 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、文献研究と現地調査を通して、船だんじり(船の形をした山車)とその祭りの地域的展開の諸相、および我が国における船だんじりとその祭りの形成・展開過程を明らかにすることにある。 平成27年度は、近畿地方、四国地方の船だんじりとその祭りに関するデータの収集・整理、および現地における聞き取り・観察調査を実施した。調査の結果、四国地方で約60、近畿地方で約30の船型だんじりの存在を確認することができた。分布は沿岸地域に顕著であるが、内陸部において河川交通・交易に関連して作られた事例も若干であるが見られる(大阪府南河内郡太子町・科長神社、和歌山県橋本市・相賀八幡神社など)。歴史的には近世以降に登場したと考えられるものがほとんどで、確実に中世にまでさかのぼることのできる船型だんじりは、京都祇園祭の船鉾のみであった。 今年度調査を行った船だんじりは、その形態から(1)御座船型、(2)廻船型、(3)鯨船型、(4)その他に分けられるように思われる。「御座船型」は渡海を伴う参勤交代の際に大名が乗る御座船を模したものであり、今回の調査対象の大多数を占めていた。特に各城下の祭礼においては、藩主の権力の象徴として神輿渡御の行列の中に導入されたと考えられる。御座船型の船型だんじりは、その巡行にあたり「御船歌」を伴う事例が少なくない。廻船交易が盛んな港町には廻船型(香川県小豆郡小豆島町など)、かつて捕鯨文化が見られた地域には独特の形態をした鯨船型の船型だんじり(三重県の大多数の地域、高知県の一部)が分布しており、名称も「鯨船」と呼ばれている。このように、船だんじりの名称・形態・意味づけには当該地域の歴史・文化・生業を反映した地域性が見られることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究では、近畿地方・四国地方の船型だんじりとその祭りに関するデータの収集・整理、および関連事例に関する聞き取り・観察調査を予定していた。実際に四国・近畿地方のすべての府県の主要図書館・資料館を訪ね、関連文献を網羅的に収集することができた。また、船型だんじりが引き出される代表的な神社祭礼の関係者を訪ね、船型だんじりの名称、形態や意味づけ、祭りでの位置づけ、お囃子や歌などに関する情報を聞き取るとともに、記録類を可能な範囲で収集した。資料館や神社の収蔵庫などに保管されている船型だんじりの実物の観察記録も数ヵ所で行った。それらの収集データを整理し、近畿地方・四国地方の船型だんじりの類型化を行い、その差異を生み出す要因について検討した。日程の都合などで、祭礼当日の観察記録を行うことのできなかった事例もあるが、近畿地方・四国地方の船型だんじりに関する基本データの収集・整理という点では、ほぼ当初の計画通り研究は進んだといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は当初の計画通り、東海地方・中国地方の船型だんじりとその祭りに関するデータの収集、現地調査(聞き取り、観察調査)、それらのデータ分析を中心に研究を進める。祭礼日が重なるなどの事情で平成27年度に現地調査ができなかった事例については、平成28年度に調査を行う形で柔軟に対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
祭礼日が重複するなどの理由で祭礼当日の観察記録調査ができなかった事例があったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に、当初計画していた東海・中国地方の船型だんじりの調査に加え、前年度調査予定であった四国・近畿地方の事例の補足調査を行う形で経費を使用する予定である。
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