研究課題/領域番号 |
15K03047
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
小牧 幸代 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (20303901)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インド / イスラーム / 表象 / 展示 / 観光 / テーマパーク / ナショナリズム / 宗教 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、前年度までに収集した世界各地のテーマパークにおける「イスラーム風アトラクション」「宗教ナショナリズム的アトラクション」「愛国アトラクション」等に関するデータの整理と分析を継続するとともに、インターネットや文献資料を通じて最新の関連情報を収集した。また、スペイン王国、トルコ共和国、ドイツ連邦共和国、チェコ共和国、ハンガリー、オーストリア共和国、インドネシア共和国、マレーシア、シンガポール共和国において、宗教・民族・国家・歴史・自文化ならびに異文化がどのように表象されているかに関する現地調査・資料収集をおこなった。これらの国々におけるテーマパーク・遊園地等に関して、全体的なコンセプトや個々のアトラクションに、ナショナリズム的要素や宗教的色彩が顕著に見られたのはトルコとインドネシアのみであった。しかし、どの国のどの遊園施設においても、特定の国や地域の特徴や文化をステレオタイプ化して表象する際には、宗教や民族が前景化することも珍しくないことが分かった。とはいえ、本研究課題の中心をなすインドのテーマパークでは、排他的宗教民族ナショナリズムの思想が複数の事例において暴力的に表明されている。今回の通文化比較を通じて、現代インドのテーマパークの特殊性だけでなく、娯楽・観光のなかで政治性が表面化する契機や場面に注目することの重要性を再認識するに至った。他方、現代インドのテーマパーク研究において、日本国内の身近な事例について見聞を深めることは、研究成果の「文化の翻訳」に大きな意味をもつ。そこで、群馬県内の遊園地を対象として現地調査・資料収集をおこなった。この調査研究の成果は、高崎経済大学地域科学研究所発行のブックレットを通じて一般に公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テーマパークにおける「イスラーム風アトラクション」「宗教ナショナリズム的アトラクション」「愛国アトラクション」に関する調査研究は、ほぼ予定通りに進めることができた。また、国内の身近な事例について見聞を深めたことで、「文化の翻訳」に有益な語彙や情報の収集が可能となった。そして、その成果は高崎経済大学地域科学研究所発行のブックレットに結実した。この執筆作業には、予想外に多くの時間を費やすこととなったため、「イスラーム的モダンアート」に関する現地調査と事例分析が、計画通りに進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、前年度に計画していた「イスラーム的モダンアート」に関する現地調査と事例分析をおこなう。テーマパーク調査に関しては、必要に応じて補足調査を実施するにとどめ、これまでに収集したデータの整理・分析に専念する。その際、国や地域の経済や産業の状況、文化や民族あるいは宗教による特徴や傾向なども考慮しつつ比較することができるデータベースを完成させる。この作業を通じて、インドの事例の特殊性を検討する。こうして整理・分析できたデータに基づき研究発表をおこなうほか、参考文献の読解を通じて解釈枠組みの精緻化を図り、論文や書籍という形での研究成果の社会還元に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、データの整理とデータベース化作業、海外・国内のテーマパーク調査、そしてブックレット執筆が中心となったため、次年度使用額が発生した。平成31年度は、インドでの「イスラーム的モダンアート」の調査とテーマパークに関する補足調査を実施するとともに、研究発表や、日本語・英語での論文発表を予定しており、旅費や英文校閲のための謝金などに使用する予定である。
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