令和元年度は、研究実施計画にしたがって、これまでに収集した世界各地のテーマパークにおける「イスラーム風アトラクション」「宗教ナショナリズム的アトラクション」「愛国アトラクション」等に関するデータの整理と分析を継続するとともに、インターネットや文献資料を通じて最新の関連情報を収集した。また、継続して調査を実施してきたインドのテーマパークにおいて、宗教・民族・国家・歴史・自文化ならびに異文化がどのように表象されているかに関する最終的な現地調査・資料収集をおこなった。すなわち、インド西部の大都市ムンバイ近郊に位置するテーマパークのパークマネージャーと、同テーマパークの運営会社であるボリウッドの大手映画配給会社の会長とその家族に、当初から違和感を覚えていた「イスラーム風アトラクション」「宗教ナショナリズム的アトラクション」「愛国アトラクション」の全体および細部に関して、率直な疑問をぶつける形でインタビュー調査を実施した。このインタビュー実施前は、テーマパークの構成やアトラクションの内容などについて、状況証拠をもとに推察し議論を組み立ててきたが、今回、アトラクションの企画とテーマパークの運営にたずさわる会長とその家族、さらに現場をよく知るパークマネージャーの側からの見解や意図を直に聞くことができ、非常に貴重な経験となった。他方、モダンアートに関する最終的な現地調査・資料収集は3月後半に予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響でインド出張をやむを得ずキャンセルしたため、これまでに蓄積した調査データと資料に基づいて、研究成果をまとめることとなった。
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