本研究の目的は、太平洋戦争の戦跡が観光産業のなかで娯楽の一部として消費される一方で、戦争当事国および現地社会で歴史遺産として価値付けられている両義的な状況を民族誌的に検討することにあった。ミクロネシア地域のパラオ共和国および米領グアムで、戦跡観光の組織形態、戦跡や慰霊碑の観光活用の実態、観光客の観光行動などに関する調査を実施した結果、現地社会では観光施策の強化に呼応して戦跡や慰霊碑の保全および活用に対する関心が高まっていること、戦跡観光の現場ではホストとゲストとガイドの間で知識の循環がみられること、これらの結果として、戦跡のレジャー化とヘリテージ化が節合していることがわかった。
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