研究課題/領域番号 |
15K03050
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
花渕 馨也 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (50323910)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コモロ / 年齢階梯制 / 移民 / 援助 / 老人 / トランスナショナル / 同郷組合 / アソシアシオン |
研究実績の概要 |
平成27年度は、7月29日から8月19日までの期間、コモロ連合国・ンガジジャ島およびムワリ島の二つの村落においてフィールドワークを実施し、次の5つの課題について調査を行った。①「フランスを中心とした海外への移民流出の状況」、②「海外に住む移民と家族とのトランスナショナルな関係」、③「海外移民による経済的影響と故郷村落への援助活動の実態」、④「海外移民の影響による年齢階梯制の形態の変化」、⑤「海外移民の影響による村落の社会構造および生活慣習の変化」。 調査の進行は概ね良好であり、基礎的な調査データの収集に成功している。①「フランスを中心とした海外への移民流出の状況」に関しては、1990年代以降急激に増加した移民流出の動きが落ち着いたが、現在でもさまざまな闇ルートによってフランスに入国する移民がいる実態について明らかにすることができた。②「海外に住む移民と家族とのトランスナショナルな関係」に関しては、移民と故郷の家族との柔軟な移動について明らかにするとともに、個々の移民による家族関係の多様性についても聞き取りを行った。③「海外移民による経済的影響と故郷村落への援助活動の実態」に関しては、未だ多くのデータを収集できていない。平成28年度の調査において重点的に調査を行う予定である。④「海外移民の影響による年齢階梯制の形態の変化」に関しては、海外移民による大結婚式(年齢階梯制の通過儀礼)実施の実態、大結婚式の形態変化について調査を行い、特に高齢者の年齢階梯制度内における地位についての考察を行った(業績図書参照)。⑤「海外移民の影響による村落の文化や生活慣習の変化」に関しては、未だ十分な調査を行っていないが、頻繁に帰国する移民による影響によって食習慣などさまざまな面で西洋化の影響が出てきていることが観察調査により示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コモロでのフィールドワークを実施し、移民を送り出す側の状況と、移民とのトランスナショナルな関係の実態について、これまでに十分な調査データを獲得することができている。また、調査データの整理・分析作業も順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、フランスのマルセイユ市およびパリに住むコモロ人移民コミュニティでのフィールドワークを予定しており、村や地区ごとに組織されている同郷組合による故郷への援助活動の実践について調査する予定である。調査はコモロ諸島・グランドコモロ島のS村およびS村を含む12の村で形成される地区からの移民集団と同郷組合を主な対象とする。すでに昨年度のフィールドワークにおいて、対象地域の人びととの信頼関係および人的ネットワークの形成に成功しており、移民の基本的な生活様態および、移民コミュニティについての基礎的なデータは収集している。これまでの調査ではマルセイユ市を中心とした移民コミュニティのみを調査対象としてきたが、移民のネットワークは複数の都市を結んで形成されているため、その実態調査のために、今回はパリのコモロ系移民を含めた広域調査を実施する。 今年度の調査では、次の3つの課題に沿って調査を行う予定である。①移民による同郷組合(アソシアシオン)の形成史、②コモロ系移民による同郷組合の組織と活動実態、③同郷組合による故郷村への援助活動の実態。調査方法は主に聞き取りによるインタビュー調査である。これらの調査から、移民同郷組合の具体的援助活動の実態と故郷との援助を通じた紐帯関係の形成について明らかにすることが今年度の目標である。
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