研究課題/領域番号 |
15K03050
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
花渕 馨也 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (50323910)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ディアスポラ / 移民 / 海外送金 / 援助 / 社会変化 / 慣習 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、フランスのコモロ人移民の送り出し側であり、援助の受け入れ側であるコモロ諸島・ンガジジャ島で約2週間の現地調査を行った。調査はンガジジャ島ハンブ地区に属する11の村全てを対象として、次の5つの項目について聞き取り調査を行い、地域的な共通性と相違に関する比較を行った。①移民と故郷の親族との関係、移民送出の経緯。②移民から故郷の親族への海外送金や援助の使用目的。③移民同郷組合による村や地域を対象とした援助の実態と成果。④ンガジジャ島村社会におけるアンダ(年齢階梯制度)と移民の経済的影響との関係。⑤ディアスポラ・コモリエンヌの影響に対するコモロ住民の評価。 調査はおおむね順調に実施され、十分なインタビュー・データを収集することができた。現在、その分析を進めているが、おおむね次のことが明らかになった。①多くの移民が近親者からの経済的援助を受けて移住を実現しており、移住の動機として個人的理由よりも家族の集団的な期待の影響が大きく、移住後も移民と家族が強い紐帯を維持している。②移民は頻繁に海外送金を行い、故郷の家族を扶養しているが、海外送金の最大の使用目的はアンダの大結婚式の費用である。③全ての村の出身者が移民同郷組合を組織しており、村や地域を対象とした援助活動を活発に行っている。最も重要な事業としてモスクの建築があり、村同士の競争関係も見られた。④故郷での社会的地位を高めようとする移民の経済的影響による大結婚式の費用は高騰し、それにより大結婚式を実現できない中高年層が増加するという社会的影響が出て来ている。⑤移民の援助による貢献に対し住民の評価はおおむね肯定的だが、外国に住む移民が村の政治的権力を握る状況に対し批判的な意見も聞かれた。 現在、以上のような分析を統合し、移民の影響について総合的に評価するまとめ作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査は予定どおり順調に実施されており、十分なデータを収集することができている。 ただし、データの整理と分析作業が若干遅れており、今後改善をはかる必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度が研究計画の最終年度であるため、調査により、不足しているデータの収集を行うとともに、これまでのデータの整理と分析を進め、総合的な分析により研究成果をまとめる作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
4,460円の残余が出たが、次年度には必要な消耗品の購入費等によって支出を行う予定である。
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