平成30年度は、本研究計画の最終年度であり、これまでの調査によるデータ収集を補完するための調査と、データ分析による研究成果のまとめを行った。 調査は、平成30年8月3日から8月18日までの約2週間、フランスのパリおよびマルセイユにおいて実施し、グランドコモロ島S村出身者のアソシアシオン(同郷組合)における、①フランス地方自治体との関係、②地方自治体によるアソシアシオンへの補助金、③アソシアシオンによる年次報告書による組織と経理の管理について、④アソシアシオンへの移民諸個人の関わり、⑤海外移民による故郷の家族への海外送金の実態、⑥アソシアシオンによる故郷村への海外送金・援助の実態、などの調査テーマについて、聞き取りを中心とした調査を行い、十分なデータを収集することができた。 調査の結果から、2000年代以降に活発化し、急激に増加したコモロ人移民によるアソシアシオンの組織化には、コモロ人移民の人口増加だけではなく、アソシアシオン法の精神に基づく地方自治体による地区住民組織の推進を背景として、補助金獲得を目的とした移民によるアソシアシオンの公的登録が進められたことが明らかになった。また、それにともない、補助金に対するアカウンタビリティとして組織の管理と活動報告書の作成が求められるため、行政府が求めるアソシアシオンの管理モデルに基づいて、コモロ人移民のアソシアシオンが成型されてきたことも明らかになった。 また、移民と故郷とを結ぶ新たに登場してきたトランスナショナルな社会空間において、総額でGDPの20%近くを占める、移民から家族への海外送金や、アソシアシオンの活動を通じた故郷村を対象とした海外送金・援助の活動の影響が、故郷の家族の生活や村の社会構造に大きな変化をもたらしていることも明らかになった。
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