グローバル化が進行し、多くの人口が柔軟に移動する次代にあり、コモロ諸島のような小島嶼国家のみならず、多くの発展途上国は大量の移民を先進国に送り出しており、移民と故郷を結ぶトランスナショナルな社会空間が、従来の社会的関係を再編し、変容させつつあるといえる。移民による故郷への海外送金や組織的な援助活動は、発展途上国の経済や文化、社会生活に大きな影響を与えるようになっており、コモロ人移民による故郷との社会的紐帯をミクロな人類学的視点から明らかにしたことは、トランスナショナルな社会空間の中で、人が取り結ぶ新たな社会関係の具体的な動態について知る上での、基礎的な研究となると考える。
|