最終年度にあたる平成30年度は、当初の予定通り、高岡市伏木の「伏木曳山祭」、南砺市福野の「福野夜高祭」、東京都府中市の「くらやみ祭り」、砺波市の「となみ夜高まつり」、静岡県森町の森の祭り、秋田県仙北市角館の「角館の祭り」、北海道札幌市の「YOSAKOIソーラン祭り」、青森県青森市の「青森ねぶた祭」、兵庫県姫路市の「灘のけんか祭り」の調査を行った。これらの祭礼については複数年の調査により十分なデータを収集することができた。 調査結果を比較検討した結果、青森ねぶた祭やYOSAKOIソーラン祭りでは、審査員が審査し表彰するという仕組みが出来上がっていた。その成立経緯と変遷、運用状況の調査から、採点競技としての競技化が進行することで、祭礼のあり方に多大な影響を与えていることが明らかになった。 一方、曳山や神輿などをぶつけあう「喧嘩祭」については、対戦相手、場所、時刻、ぶつかり方などを事前に決め、ルールを明確にした上で遵守を求める、スポーツに近い「競技化」の傾向が明らかになった。そうしたルールが成立する契機として、高度成長期に事故や事件があり、警察や行政からの要請や交渉のあったことが判明した。競技化の結果、単に力比べの要素があるだけでなく、他町と対抗するためのさまざまな駆け引きが生まれ、その部分を楽しむ傾向があることも明らかになった。また「見せ場」が明確になることで観光化する傾向を読み取ることができた。その一方で、競技化を志向しない祭礼の存在も明らかになった。 今後は「競技化」の概念をより明確化し、2つのタイプの「競技化」を包含しうる理論を構築することが課題である。
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