研究課題/領域番号 |
15K03055
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研究機関 | 高千穂大学 |
研究代表者 |
田中 正隆 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (30398549)
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研究分担者 |
矢澤 達宏 上智大学, 外国語学部, 教授 (00406646)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アフリカ / ブラジル / ベナン / メディア / 公共圏 / リテラシー / デモクラシー / 世代交代 |
研究実績の概要 |
本研究はグローバル化するアフリカ社会で、メディアがどのように人々の生活に浸透し、その暮らしを構築するかを、ブラジルのアフリカ系社会との比較から明らかにする。具体的な個人とメディアとの関わりに焦点をあて、情報環境の変化が社会にもたらす意味を探る。 今年度は研究代表者がベナン、トーゴでの調査地において現地調査を実施した。田中(代表者)はベナン南西部モノ・クフォ県においてローカルラジオ局調査と2016年大統領選挙の世論状況についてアンケートと聞き取り調査を行った。アフリカの小国の情勢は日本では把握が不可能なものであり、この作業を通して世界各地でみられる世代交代と社会変動に関する比較研究への糸口を見出した。トーゴにおけるメディア調査でもジャーナリストや視聴者への聞き取りを行った。トーゴでは2015年の選挙とその結果の人々の受容についてデータ収集を行った。ベナンでの調査結果との比較から、トーゴにおいても選挙の話題は市民に関わる パブリックな事柄との認識があると考えられる。 ブラジルにおいても五輪招致などの国家的行事を梃に社会変動が進みつつあり、これらと本共同研究の課題である公共性の内容との節合が期待される。矢澤(研究分担者)は初年度からの研究の進展にともない、調査地や調査対象機関を修正することとなり、その準備のため2016年度の調査を次年度に繰り越すことなった。その間、昨年度の資料にもとづき、研究ノート論文として公開する成果をあげた。2017年度の調査を円滑に実施するために、現在も準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である、政治変動期にあるベナン、トーゴおよびブラジルでの情勢把握やメディア機関への調査は順調に進んでいる。各地の社会情勢を把握するとともに、メディアをめぐるジャーナリストとオーディエンス双方への聞き取りにより、各地の世論総体の動向を明らかにすることに努めている。 代表者の調査地、ベナンとトーゴでは、2015年から2016年にかけて国政選挙があり、政治アクターの世代交代を見た社会とそれにともなう体制転換が不十分に終わった社会があった。選挙や政治動向について語るのは、人々が皆が関わる社会について発言することであり、世論における公共性が現われる機会といえる。本年度は議会議員選挙の動向やそれについての民意の動向を出版資料収集や聞き取りで把握してゆくことで、人々の間の討議の場=公共圏の調査地域での実態を明らかにしてゆく。 分担者は今年度、調査地ブラジルでの比較的中、長期にわたる調査を計画しており、社会情勢についてより詳細な資料収集につとめる予定である。代表者、分担者とも、たとえば現地メディアの放送への参加、出演、発言など、能動的な参与観察を試みており、視聴者やメディア関係者双方の情報流通の具体を把握してきている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、ベナン南部、隣接トーゴ国での調査結果とブラジルの最新事情の把握に努め、比較研究を試みる。本年度の調査は田中が8-9月に、矢澤が9月以降に実施する。2-5月期に調査地との連絡、準備をすすめ、7-9月期に現地調査を実施する。具体的にはアフリカではベナン、トーゴのメディアと地域NGOの調査。視聴者のメディア利用として参加型番組の調査をする。人々における公共なるものを、語りや行事、事件の事例収集などをとおして内在的理解に努める。また、ブラジルの黒人コミュニティでのメディア利用、メディア参加の実態調査を行う。調査状況を鑑みつつ、変動期ブラジル社会の最新事情について情報収集を慎重にすすめる。 現地における公共の語りとメディアの関わりについての調査をすすめるうちに、現在の西アフリカや南米ブラジルで進行中の政界、経済界における世代交代と社会変動について、人々の意見がもっとも端的に表明されることがわかった。これに関しても調査を深め、これまでの調査結果をもとに、9月以降に、政治(田中、矢澤)、経済(田中、矢澤)、宗教(田中)、社会運動(矢澤)の各視角から理論的展開について討論、検討、総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者矢澤はH29年2-3月にブラジルでの現地調査を予定していたが、研究の進展にともない、調査地や調査対象機関の変更の必要が生じ、準備の都合上、今年度中の実施が困難となった。それゆえ、やむをえず次年度に延期した。代表者(田中)との調査結果のつきあわせや研究方向の討議をへてのことであった。だが、国内での作業のなかで矢澤は昨年度までの調査結果を整理し、その成果の一部を研究ノートにまとめて公開することに専念した。
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次年度使用額の使用計画 |
代表者は計画通り実施する。 分担者は次年度の研究経費に計上し、業務を合理化しつつ調査期間を捻出し、これまでの調査結果を踏まえて本年度の調査内容を充実させる。分担者の経費について、前年度の繰越額である574393円を加え、今年度の調査研究活動に使用する予定である。今年度は9月以降に現地調査を実施する。
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