本研究はグローバル化するアフリカ社会で、メディアがどのように人々の生活に浸透し、その暮らしを構築するかを、ブラジルのアフリカ系社会との比較から明らかにする。具体的な個人とメディアとの関わりに焦点をあて、情報環境の変化が社会にもたらす意味をさぐる。 今年度は研究代表者がベナン、トーゴでの調査地において現地調査を実施した。研究代表者はベナン南西部モノ・クフォ県においてローカルラジオ局調査と2016年の政権交代後の世論状況についてアンケートと聞き取り調査を行った。この作業から世界各地でみられる政治アクターの世代交代と社会変動に関する比較研究への糸口を見出した。 ベナンでは政界の外部にあって海外での研修や事業経験のあるディアスポラが、元首の有力候補となってきた。一般民衆がマスメディアを通してどのように候補者の情報を得て、それがどのような影響を投票行動に及ぼしているかを識者や一般の人々に聞き取り調査をした。これは研究期間中に生じた政権交代を具体的な事例とすることで可能となった。トーゴにおけるメディア調査では、実際に現地のラジオ番組に参加し、他の出演者やジャーナリストとの意見交換を行なった。トーゴでは2015年の選挙とその結果に対する人々の受容についてデータ収集を行った。滞在期間中に市民によるデモンストレーションに遭遇し、現政権への意見表明について参加者に聞き取りをした。 研究分担者は前半期は、本研究課題に深く関わる博士論文の執筆と理論的考察に時間を割いた。そこではブラジル黒人運動の理論母体となった黒人新聞が重要なトピックとなっており、とくにサンパウロ州での調査資料をもとに、人種とネイションについての言説の歴史的変遷を明らかにした。後半期には本課題の資料収集として、ブラジル内4都市(サルヴァドール、サンパウロ、ポルトアレグレ、リオデジャネイロ)において現地調査を行なった。
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