研究実績の概要 |
データベース作成は完璧ではないがおおよそ完成した。著作権ともからむのでHPなどでの公表は行わないが、同じような研究者には要望があればコピーを無償で与えるものとしたい。 6月の日本文化人類学会、7月の国際人類学・民族学会議(IUAES,ブラジル開催)、3月の日本オセアニア学会で、口頭発表(国際会議は英語を使用)を行った。すべて「ヘリテージとアイデンティティ」という題であるが、内容は少しずつ異なっている。また、12月初旬にイギリスで行われた欧州オセアニア学会と軌を一にして行われた王立美術協会でのオセアニア展を鑑賞した。オセアニアの伝統的な工芸品は、近年では芸術作品として扱われる傾向が強く、この展覧会もその流れの中にある。終わりの方には現代アーティストの作品群も展示されていた。IUAESでセッションを組んだ仲間で論文集を出版する企画が進んでおり、2019年5月に完成して提出する予定となっている。 2月25日~3月19日にニュージーランド・オークランドへ行き、インタヴュー調査、参与観察を行った。以前から懇意にしているアーティストに会い、追跡調査を行ったり、展覧会を鑑賞した。2年ぶりであり、太平洋諸島系のアーティストの世界にもさまざまな動きがあることを見いだした。パフォーミングといった新しいアートの形式から、伝統文化復興に関心を向ける人もおり、ヘリテージの呪縛を離れて新たなスタイルを見いだそうとする人々もいた。アート活動全般からいうと、太平洋諸島の文化遺産を継承するよりも、現在の移民の暮らしを描いたり、ポストコロニアルに関わる問題提起をすることの方に軸足が傾いている様子がうかがえた。移民アーティストにとっては、ホスト社会がコンタクトゾーンとなり、本国には存在しないアートの姿を見いだすことができたといえる。前述の国際企画論文集(英文)の論文としてこの研究の成果を盛り込む予定である。
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