最終年度において、包括的な基地周辺の共同体の比較・分析を実施した。とりわけ沖縄県北谷町内にあるキャンプ端覧・嘉手納基地・キャンプ桑江に隣接する旧字地を中心に接収・移転後の自治会の再編・郷友会組織の現在の状況および年中行事他、旧村落の聖地遥拝儀礼などを中心に調査を実施した。沖縄県北谷町の協力をえて、キャンプ端慶覧内に残存した旧北谷内の字の水の神ほか、拝所の撮影と伝承記録を行った。また、読谷村内では、基地返還地に再編されつつある宇座地区の新興団地および旧自治会との住民連絡・組織の関係に関する情報を再整理することができた。また、同村の強制移転したままの集落である楚辺地区では、基地内にある旧楚辺の聖地7カ所の現状に関して記録することができた。さらに北谷町では戦後、移転した後に基地用地の返還により多くの住民が帰村しながらも、その後の基地からの爆音問題により住民の半数以上がさらに転出した砂辺集落の共同体に関する調査を実施した。具体的な内容は、砂辺地区の旧住民による組織体である「砂辺戸主会」の組織・目的・活動と、新住民も含み砂辺自治会の二重構造に関する詳細な調査と分析を行った。同時に旧住民を中心とした共同財産と戸主会により管理されている聖地、またその儀礼等を参与観察、記録することが可能であった。上記の調査資料の分析により、本研究の主要な目的である、1強制移転村の共同体、2基地返還地の現在、3基地周辺の村落自治の諸課題の記録と比較研究が可能であった。この分析に関しては「沖縄県の基地周辺共同体と文化継承に関する<境界>領域の人類学的考察」(2018年度内発行予定)としと明治大学社会科学研究所叢書に投稿した。また、本研究の沖縄研究への位置ずけを明確にするために2017年4月29日「国際社会の中の沖縄・奄美」と題して渡邊欣雄、クライナー・ヨーゼフ教授他と国際シンポジュウムを開催した。
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