本研究では、南アジア周辺領域で、「恥」は親族を中心とした互酬的の枠組みと大きく関わっていたが、国民国家的な体制が構築されていくなか、標準語の読み書き能力、演説能力の不足が恥と結びつけられるようになったことを確認した。また、開発や出稼ぎ経済が広がるなか、「恥」は消費とも結びつけられるようになったことも示した。さらに、ネパールにおいて恥の象徴とされてきた「土地なし農民」という存在が、国家による支援対象として認定されるようになり、新たな「社会的絆」の場を創造していることも明らかにした。そして、そうした社会的弱者への再分配に伴う恥が、同時代的に広がっていることを指摘した。
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