研究課題/領域番号 |
15K03065
|
研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
浅野 久枝 京都精華大学, 人文学部, 講師 (20700008)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 無縁 / 無縁仏 / ミサキ / 年忌明け / 先祖と無縁 / 餓鬼仏 / 日系社会の死者供養 |
研究実績の概要 |
昨年度は複数の県立図書館にて、「無縁」「無縁仏」「餓鬼仏」の言葉がどのような意味内容を持って使われているかを焦点に、自治体誌、郷土史から用例の収集作業を行ったが、そこで収集したコピー資料をデータベース化するためにアルバイトを雇用し、作業を行った。また、昨年度に引き続き、自治体誌、郷土史から用例の収集作業を行うために長崎県立図書館、宮崎県立図書館で調査を実施した。「年忌明けの仏が無縁仏になる」事例が全県に広がっていたため長崎、宮崎を選んだが、そのような事例の発見には至らなかった。昨年度の調査データを中心に、日本民俗学会の68回年会にて『「年忌明けの仏が無縁仏となる」民俗について』と題して発表を行った。 また、ペルー日系移民による「無縁供養」や無縁墓の実体を把握するため、ペルー国のリマ、およびカニエテ、スーペに訪れた。カニエテやスーペの墓地内の巨大な「無縁塔」前での儀礼、リマやカニエテの寺院での儀礼を参与観察し、血縁よりも日系の縁を重要視している社会のあり方を調査した。ここでは、年忌明けをしていない仏も、した仏も、血縁者のいる仏も、いない仏も、あまり区別をされていないことが分かる。「無縁」「縁」の語が持つ意味を考える上で、重要な事例を収集することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
夏期休暇はペルー調査に時間と予算が取られたため、日系人社会の「縁」についての調査は進んだが、国内調査は宮崎と長崎のみに留まった。「年忌明けの仏が無縁仏となる」事例を1例ずつ発見している青森県、岩手県、福島県には必ず行かなくてはならない。それぞれ4日以上の調査日数が必要となるため、時間的に厳しい。一人での作業には限界が生じている。かといって、調査員を雇用しての調査は、宮崎県で実施してみたが、調査内容、効率共に充実した調査とは言い難く、やはり浅野が現地に赴かねばならないため、全国を視野に入れた研究という意味では、遅れていると言わざるを得ない。 また、私事ではあるが、3月に実母が大腿骨を骨折し、介護に時間を取られる状況が続いている。6,7月に最低一箇所の調査の心づもりをしていたが、調査の時間を作ることが難しくなっている。 また、協力員の小谷氏も公務で忙しいとのことで、宮城、岩手の事例調査も滞っている。
|
今後の研究の推進方策 |
先に述べたように、青森県、岩手県、福島県の調査は必ず実施しなくてはならない。また、「年忌明け=無縁」の事例は発見できていないが、大分県の繋がりがあり、また御霊信仰の強い愛媛県には調査に行くべきかと考えている。 それらを実施した上で、「年忌明け=無縁」の事例のデータベースを載せ、「無縁」の意味の多様性について、日本社会における「縁」についての分析を載せた報告書を作成する事を予定している。 しかし、時間的な問題があり、時間配分を考えつつ、調査とまとめの作業を行っていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データベース化の謝金支払いのために余裕を持っておいたが、成果の提出が遅れたため、支払いをすることができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
データベース化の謝金として使用する。
|