研究課題/領域番号 |
15K03067
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
塩路 有子 阪南大学, その他部局等, 教授 (70351674)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 英国 / フットパス / 地域振興 / Walkers are Welcome タウン / ウォーキング / 観光 |
研究実績の概要 |
2015年8月から9月にかけて現地調査を実施し、主な調査地であるコッツウォルズ地域ウィンチコムだけでなく、その近隣のダースレィ、中央イングランドのロス・オン・ワイ、北イングランドのヘブデン・ブリッジ、ウェールズのチェプストウという5ヶ所のWaW(Walkers are Welcome)タウンにおける活動内容を具体的に明らかにした。 WaW概念発祥の地であり、最初のWaWタウンであるヘブデン・ブリッジでは、観光市場ではなく、フットパスを活かしたウォーカー誘致という点からフェアトレード・タウンの概念を応用したことがわかった。2015年現在、116のWaWタウンが誕生していることから、現在とくに産業もなく観光客も多くない地域においてWaWタウン認定とWaW活動促進によるウォーカー誘致が地域再活性化の一つの方策となっている。 上記のWaWタウンでは、WaW活動への取り組み方がそれぞれ異なっていた。ヘブデン・ブリッジ、ウィンチコム、ロスのように住民主導でWaW活動が開始される町がある一方で、チェプストウのように行政主導で始まり、その後、住民、行政一体型(ダースレィ、ウィンチコム、ロス、チェプストウ)になっている場合もある。共通点として、各地のWaW活動は、知識階級の人々が核となって推進し、彼らは自然環境も含めた自らが暮らす地域を歩くことに愛着があるため、それをフットパスの活用を通して実現しようとしていることである。また、彼らの中にはウォーキングを趣味や日課とする一方で、フットパスの維持管理をボランティアで行ったり、地域づくりの団体で活動したり、自ら積極的に地域やコミュニティと関わろうとする人々が多い。これらの事例から、英国におけるWaW活動は、フットパスを活用した地域振興を目的とする行政と、多様な社会活動を自発的に行っている住民の活動がうまく融合し発展してきたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の内容としては、年度は前後したが、英国の5ヶ所のWaWタウンで調査できたことで、今後のウィンチコムを中心とする調査地を分析する上で比較対象の視点ができた。さらに、その点で、今後、英国におけるフットパスをめぐる「パブリック」概念を考察する上でも意義があったため、現在まで研究はおおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
コッツウォルズ地域のウィンチコムを拠点としながら、各地のWaWタウンを調査し、フットパスをめぐる文化・社会的環境の多様性について把握する方向で推進する。また、今後は、フットパスを含む自然環境へのアクセス権による関係性の構築を考える上で、より自由なアクセス権をもつスコットランドやフィンランドなどの国や地域と比較することも検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
「人件費、謝金」が当初予定していたよりも少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、本年度「旅費」または「その他」において使用する予定である。
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