日本人のグローバル・マイグレーションによって世界に形成されてきた日本人コミュニティは、この十数年において高齢化が進み、海外に在住する日本人高齢者のケアの問題が深刻化してきている。異文化間結婚(いわゆる国際結婚)によって、老後を海外で過ごす日本人女性が多いことから、海外での老後の問題は、女性の問題であることが明らかとなっている。本研究は、老後を海外で過ごす日本人の老いに伴う喪失の経験に焦点をあて、高齢者のアイデンティティの変化を明らかにするものである。異文化においても高齢者の尊厳あるいはウェルビーイングを支えあうために日本人コミュニティが共有するエスニシティに考察を与える。 2020年度は、2019年度にCOVID-19により延期せざるを得なかったシンポジウム(テーマ:"Global Migration and Aging゛、後援:在ニューヨーク総領事館、ニューヨーク日系人会、City University of New York、桃山学院大学、場所:City University of New York)を開催する予定であったが、状況が依然として改善されなかったことから、残念ながら、中止せざるを得なくなった。この内容に関しては、パンデミックの状況が改善された後に、再度実施するように調整をしている。 2020年度においては、これまで収集してきたデータ(インタビュー調査およびアンケート調査)、あるいはフィールドワーク調査によって収集してきた資料(短歌集、句集など)の未分析のものを使って研究を進めることとし、論考にまとめた。
|