研究課題/領域番号 |
15K03069
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
井上 昭洋 天理大学, 国際学部, 教授 (20271702)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 先住民 / ハワイ人 / 主権 / 政治運動 / 文化活動 / 文化フェスティバル |
研究実績の概要 |
2017年9月8日から9月16日にかけて、米国ワシントン州シアトルとハワイ州ホノルルで海外調査を行った。シアトルでは、毎年開催されるSeattle Live Aloha Hawaiian Festivalの参与観察を行い、フェスティバルの関連資料を収集した。同フェスティバルは、シアトル近郊に移住したハワイ人が中心となって企画運営されている。内容はハワイで行われる同種のフェスティバルと同じく、飲食物や衣料・工芸品のブースが軒を並べ、フラやハワイ音楽のコンサートが催されるというものであった。フェスティバルの主な参加者はハワイにゆかりのある人々と考えられるが、それ以外の人々も多く参加していると見受けられ、米国本土社会において一エスニック集団であるハワイ人の文化を知らしめる役割を果たしていることが見て取れた。ホノルルでは、日本国内で入手困難なハワイ伝統文化およびハワイ社会に関する書籍や資料を入手し、現地の最新情報の収集に努めた。 2017年12月2日に明治大学中野キャンパスで開催されたシンポジウム「火山のめぐみ」において「ハワイ人の伝統的な生活世界」と題して発表を行った。火山島であるハワイ諸島について、その地形風土の特徴に加え、前接触期の時代にどのような伝統的土地制度が発達したかを説明し、ハワイ人の伝統的な土地観が現在の環境保全・主権回復の運動のバックボーンとなっていることを指摘した。また、その内容を『すばる』2018年3月号において「ハワイ諸島/火の島、風の島、水の島」と題して発表した。この発表を行うことにより、本研究の調査対象であるハワイ人の政治活動・文化活動の分析に異なる視点を導入する必要性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度に学内の各種委員(百周年構想会議、国際交流センター協議会など)に新たに任命され校務が増えたことにより、また部長を務めるホッケー部の夏期ドイツ遠征(ドイツの交流協定校との文化交流を兼ねた遠征)の企画・準備・引率の職務があったことにより、研究および海外調査に費やす時間を十分に確保できなかったのが主な理由である。十分な現地調査ができなかったため、平成29年度が当初計画の調査最終年度であったが、1年間調査期間を延長することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
文化活動の領域においては、ハワイ州内の文化フェスティバルの情報収集を引き続き行うとともに、既に収集したフェスティバル関連情報の分析を行う。加えて、現地調査によってハワイ州内のフィッシュポンドやタロイモ畑の保全運動を展開している組織についての情報収集を行い、彼らのハワイ人に関する政治的問題(主権回復など)についての立ち位置について分析を進める。 政治活動の領域においては、参与観察によって得た情報に加え、ネット上での情報収集に努め、実現可能な方策(短期の海外調査を補う形で、SNSやメールなどによるデータ収集)によって、先住ハワイ人の置かれている政治的状況へアプローチし、総体的に彼らの活動を分析する。また、頓挫してしまったOHA(ハワイ先住民局)のハワイ人自治体設立プロジェクトのその後について、現地で関係者から最新の情報を入手し、主権運動の困難性について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来の最終年度であった平成29年度は、学内校務の増加および部長を務めるホッケー部の夏期ドイツ遠征の企画・準備および引率に時間を取られ、予定していた海外調査を十分に行うことができなかった。そのため残高が発生し、調査の進捗状況と鑑みて、調査期間の1年延長を申し出た。 本年度は、夏期長期休業中の8月から9月にかけて米国ハワイ州での本調査、および春季休業中の2月から3月にかけてフォローアップ調査を計画しており、主にこれらの調査費用として支出を計画している。
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