研究課題/領域番号 |
15K03070
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
笹原 亮二 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 教授 (90290923)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 島 / 民俗芸能 / 伊勢志摩 / 佐渡島 / 伊豆諸島 / 獅子舞 / 法印神楽 |
研究実績の概要 |
文献等の資料調査・情報収集に関しては、三重県立図書館・伊勢市立伊勢図書館等において、伊勢志摩地方の民俗芸能と祭に関する資料調査、三宅島郷土資料館等において、伊豆諸島の民俗芸能と祭に関する資料調査、新潟市立中央図書館・新潟県立図書館等において、佐渡島の民俗芸能と祭や闘牛に関する資料調査、宮城県図書館・仙台市民図書館・仙台市歴史民俗資料館等において、宮城県三陸地方と岩手県三陸地方の民俗芸能と祭に関する資料調査を行い、論文や調査報告等の文献資料や情報を収集し、本研究の主要な研究対象地域の民俗芸能と祭等の全般的な様相の把握を行った。その他、沖縄県立図書館・隠岐の島町立図書館等においても、各地の民俗芸能と祭や闘牛に関する資料調査を行った。 以上の資料調査・情報収集を踏まえて、伊勢志摩地方では、伊勢市楠部町の田植の神事と芸能、志摩市阿児町甲賀の大念仏行事・鼓踊、同市同町安乗の大念仏行事、同市大王町船越の盆踊、南伊勢町方座浦・贄浦の浅間祭、同町泉の大念仏・火振・盆踊、同町阿漕浦の大念仏、同町道方の盆踊、度会町下久具の御頭神事、松阪市松ヶ崎のかんこ踊等について、伊豆諸島地域では、三宅島神着の木遣太鼓、同島富賀神社の祭の木遣歌・太鼓・獅子舞、熱海市初島の鹿島踊等について、佐渡島では、佐渡市北田野浦の花笠踊、同市徳和の大獅子・鬼太鼓・豆蒔き、同市真野新町の獅子舞、同市両津湊の獅子舞・鬼太鼓・下り羽・芸山車、同島外海府地域の鬼太鼓・獅子舞等について、宮城県三陸地方では、石巻市雄勝町大浜の雄勝法印神楽、気仙沼市松崎中瀬・唐桑町竹の袖の本吉太々法印神楽、石巻市沢田・女川町女川浜・鷲神・竹の浦の獅子振りについて、闘牛では、新潟県小地谷市・長岡市の角突き、愛媛県宇和島市の突き合い、沖縄県うるま市の闘牛について、それぞれ現地調査を実施し、上演の様相等に関する写真・動画映像等の資料を作成・収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献等の資料調査・情報収集に関しては、本研究において、主要な研究対象地域として設定した伊勢志摩地方の多島海的海域、伊豆諸島と伊豆半島地域、佐渡島、宮城県三陸地方と岩手県三陸地方に関して、前年度までに各地の図書館や資料館等において行った先行研究等の文献等の調査や情報収集の成果を踏まえて、更に詳細な資料調査と資料や情報の収集をを行い、未調査・未収集の多くの有用な資料や情報を収集することができた。 その結果、それらの資料や情報を前年度までに収集した資料や情報に加えることで、本研究の対象となる各地域の民俗芸能と祭の様相や、それらが伝承されてきた地域の地理的・歴史的・民俗的な環境について、より的確に把握することができた。 そして、そうした資料や情報を踏まえて、伊勢志摩地方各地の浅間祭や大念仏、伊豆諸島の三宅島や伊豆半島の熱海市初島の民俗芸能や祭、佐渡島の外海府地域の民俗芸能等、前年度まで未調査であった地域の民俗芸能や祭について現地調査を実施し、写真や動画映像を初め、多くの資料を作成・収集することができた。 また、1980年代まで行われていた八丈島を含め、沖縄・奄美・隠岐・八丈島といった島嶼部で盛んな闘牛について、それらを島の文化として捉えることが可能か否かといった課題が前年度までの調査で浮上してきたが、本年度は、島以外で闘牛が行われている新潟・宇和島の闘牛について資料調査や情報収集や現地調査を行い、そうした課題についての検討に資する資料を一定量収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに実施した各地の民俗芸能と祭に関する資料調査や情報収集や現地調査によって、本研究の主要な研究対象地域の民俗芸能と祭の特徴が一層明らかになってきたが、同時に、様々な問題の所在も明かになってきた。 例えば、伊勢志摩地方では、前年度までの調査で認められた、御頭神事の獅子舞には集落毎に様々な差異が見られ、本拠地が近接する伊勢大神楽とも芸態等に差異が見られるという特徴が、本年度の調査でも同様に認められた。こうした集落毎の多様性と伊勢大神楽との差異が、多様性に富む御頭神事の獅子舞の現状の形成にどのように関与したか、検討が必要である。伊豆諸島では、目視可能の距離にあり様々な交流交渉が想定される伊豆半島と伊豆諸島北部において、民俗芸能に鹿島踊の有無等の明確な差異が存在したが、そうした差異を精確に把握すると共に、それらが生じた要因についても検討が望まれる。佐渡島では、二人立の獅子舞が島内に広く分布するのに対し、大獅子や小獅子舞は分布が限定的であったが、それぞれの獅子舞の分布の把握は現状では十分ではなく、精確な把握が待たれる。また、小獅子舞では花笠を被った役と獅子が一緒に踊り、「花笠踊」と呼ばれていて、従来から指摘がある一人立の獅子舞と風流踊の密接な関係が窺えて注目される。宮城県三陸地方では、獅子振りの獅子舞は、頭の形状が権現舞風から大神楽風まで様々で、舞い方に差異が認められ、法印神楽の際に行われる場合も見られたが、こうした獅子振りの獅子舞の集落毎の多様性に富む実態も未だ明かではなく、精確な把握が必要である。 今後、こうした各地域の民俗芸能や祭の多様性や差異の解明等の問題の検討を進めるために、各地において未調査の民俗芸能や祭を中心に資料調査や現地調査を行い、検討のための資料の充実を図りたい。 また、闘牛に関しても、調査が十分ではない地域について調査を行い、資料の充実を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 予算の残額が僅少で、現地調査の旅費に充当しても金額的に不足して十分な調査ができないが、次年度の予算と合わせて十分な旅費として執行することで、効果的な現地調査が可能になると判断した。 (使用計画) 次年度の予算と合わせて、前年度に予算不足で現地調査を行えなかった隠岐等の民俗芸能の現地調査を実施する。
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