研究課題/領域番号 |
15K03071
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研究機関 | 新潟県立歴史博物館 |
研究代表者 |
陳 玲 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (10373474)
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研究分担者 |
飯島 康夫 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20313489)
池田 哲夫 新潟大学, 人文社会・教育科学系, フェロー (50313490)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害復興 / 民俗の再構築 / キーパーソン / 生活空間 |
研究実績の概要 |
中越地震後の山古志の事例を通じて、災害復興の過程においての新しい民俗の再構築の実態を明らかにすることが本研究の目的である。 畑の開墾、野菜づくりなどの農による震災直後の回復と再生は、「帰村」後の生活と生産活動の変化を生み出してきた。野菜づくりが中心として形成された新しい生活と野菜直売所、野菜加工、かぐらなんばんなどの「伝統野菜」づくりの生産活動が著しく表されてきた。平成28年度は、おもにこれらに注目しつつ、復興過程において、新しい民俗の再構築の現象としてミクロ的に考察し、以下のことが明らかになった。 ①地震後、道路の復旧と整理は、軽トラによる生業活動が可能となった。よって、従来の人力による生業活動に大きな変化が見られた。②ライフライン復旧後、田んぼの水源の枯渇、集団移転や「離村」によって、空き地の増加が生じた。これらの現実のなかで、田畑の再整理が、家単位で顕著に行われてきた。結果として、田んぼの畑化、池化、そして、畑の宅地への近辺化の傾向が明らかになった。一方、隣接の家同士、もしくは本分家関係の家同士の間では、田畑の使用権の譲渡が頻繁に行われてきた。そして、これらは、地域による差異も見られる。③地震までの生業の家内分担として、「畑は女、田んぼは男」が特徴であったのに対して、地震後、畑づくりが中心になった新しい暮らし方が再構築され、「女の畑」と「男の畑」の性差が顕著に見られるようになった。品種の選択と運営の差異などの実態を追跡し、野菜づくりに見られる性差を新しい家族生活と生業活動の形成として位置づけて考察した。④震災後著しく現れた「野菜直売所」、「伝統野菜」「伝統料理」の創出、野菜加工場など、野菜の商品化する活動も、畑づくりが中心として展開したものとして把握し、事例の調査と収集を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
畑の開墾と野菜づくりなどの農による震災直後の回復と再生が、引き続き「帰村」後の新しい生活と生業活動の再構築を考察する上で、重要な意味をもつことが明らかになったため、新しい畑づくりとその展開を新しい民俗の再構築として関連づけた具体的な調査を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
生業活動のほかに、今後集落ごとに計画された復興プランとその後の年中行事の形成と展開を中心に、比較しながら、聞き取り調査を進め、地域による顕現された新しい民俗生活を地域の差異として位置付けて分析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた県外調査を実施できなかったため残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度の繰り越し申請をしていないため、返金する予定である。
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