最終年度は除雪用具であるスノーダンプも分析対象に加え、調査研究を進めた。スノーダンプは除雪と運搬の機能を兼ね備えた道具であり、雪の積載、運搬、投雪の流れを容易にした。三六・三八豪雪を契機に、除雪体制や消融雪施設の整備が官民ともに急速に進められた。その動きが1970年代のスノーダンプの普及につながった。 東北地方の積雪地帯ではプラスチック素材のスノーダンプが使用される中、新潟県内では鉄製スノーダンプがローカル商品として流通する。鉄の素材は新潟の湿った雪質に適し、豪雪地の屋根除雪でその効果を発揮している。その効率性の追求から、改良を加えたクマ武式スノーダンプなどの新製品が生まれ、豪雪地である魚沼地方での使用が卓越する。調査の結果、県内の鉄製スノーダンプの生産は、燕の金属加工業や、農機具・手押一輪車などの近代工業の中から生まれたことが明らかとなった。それは時代の趨勢によって産業転換を迫られる中、鉄製スノーダンプの需要増加を見込んだ生産戦略であった。 ローカル商品として食される海藻の「えご」の調査研究も継続して実施。近年、新潟県のえご草の漁獲低迷により、県内では青森県産のえご草が多く流通している。えごは新潟の郷土料理や伝統的な食文化とされながらも、その原料であるエゴノリは青森県産に依存しているのが現実である。そこで、今年度は青森県の調査を優先し、産地から生産者・卸業者・小売業・消費者に至る流通過程を明らかにした。その成果の一部については、博物館利用者及び越後えご保存会会員とともに協働で講座を開催し、成果を発表した。
|