研究課題/領域番号 |
15K03075
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
海老原 明夫 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00114405)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 法人格 / 国家法人説 / 連邦国家 / ドイツ帝国 |
研究実績の概要 |
多元的国家秩序の法の動態を適切に把握するための枠組構築のために、当年度においては、法人理論が団体の内部関係の把握にとってどのような意味を有し得るかを検討する材料として、オットー・マイアーの法人理論を検討した。オットー・マイアーは1908年に法人理論に関する詳細な論文を発表し、公法人のみならず私法上の社団法人・財団法人をも含んだ包括的な理論枠組としての法人理論を打ち立てた。その際にマイアーが法人格の機能として最も重視したのが、「分別」の機能である。私法上の法人にあっては、それは財産の分別を意味する。さまざまな社団法人や財団法人において、団体の財産をさまざまな関係者たちの処分権行使や影響から「分別」し、保護しようとするのかが、検討された後に、さまざまな公法人についても、同様の「分別」機能が析出される。 マイアーはこの論文の後に改訂出版された主著『ドイツ行政法』第2巻の第2版(1917年)で、初版(1896年)とは異なって、国家は法人ではない、と主張するようになる。そのように見解を改めた理由は、マイアーが法人格を「分別」のための技術的法制度として純化したことに求められる。つまり国家を法人と呼んだところで、国家における何を何から「分別」するのかが明らかになるわけではない、ということである。従来マイアーの国家の法人性否認については、その政治的含意(たとえば共和制に対する距離感)が強調されてきたが、それ以上に法人格の技術的純化を貫いた、という理論的根拠が重要視されるべきであることが、今年度の研究から明らかになった。 当初の予定では、この点に関する独立の論文を執筆することも今年度の予定に含ませられていたが、論文の執筆は次年度に繰り越されることになる。さらに次年度には、所期のとおり帝政中期の連邦国家理論の検討にも本格的に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度においては、オットー・マイアーの法人理論を分析・検討するとともに、それを論文に纏めることを当初予定していた。マイアーの理論の分析・検討に関しては、科研費の執行を通じて必要な資料をかなり入手することができ、内容的にも大方の検討を済ませることができた。オットー・マイアーの法人理論の構造とその現代的含意についても、ほぼ論文に纏める材料を析出し得たと思う。 ただし、具体的な論文執筆までには至ることができずにいるので、その限りで進捗状況としては「やや遅れている」という区分になる。 しかし論文に書くべきことはほぼ明らかにされているので、それ程に致命的な遅延とは評価していない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は先ず、オットー・マイアーの法人理論についての論文執筆と取り組む。 併せて、本課題の次の段階として予定しているドイツ帝政中期、主として1880年代の連邦国家理論に関する資料の収集・分析・検討にも取り組む。 その時代の連邦国家理論においては、ドイツ帝国の集権的な発展という顕著な歴史的現実が色濃く反映していると思われるので、理論の検討に加えて、ドイツ帝国の歴史的発展についての配慮も必要になると思われる。したがってその方向での資料の渉猟・収集・検討も重大な課題になってくるものと考えている。
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