研究最終年度にあたり、これまで同様に現有資料の精査とその補強(新規資料の収集と精査)を行い、本年度はとくに現地ヒアリング調査に重点をおいて取り組んだ。具体的には以下のとおりである。 (1)研究代表者がこれまでに個人的に収集してきた資料の読解および整理を行った。 (2)現地での資料収集と平行して、CNKI(中国学術文献オンラインサービス)をはじめとするデータベースや最高人民法院をはじめとする各クラス法院のウェブサイト上の裁判例に関するデータベース、インターネットやソーシャルネットワーキングサービスを利用して資料を収集し、その読解および整理を行った。 (3)昨年度までの研究結果にもとづき、現地調査を企画・実施した。医療紛争の分野における変化・制度化がもっとも顕著であることがこれまでの調査で判明していることから、遼寧省瀋陽市、福建省福州市、吉林省長春市、上海市および北京市の関連する紛争解決機構においてヒアリング調査ならびに資料収集を行った。また、台湾からの影響も大きいことが判明したため、台湾・台北市での現地調査を実施した。また、業界が主宰する調解の実態にアプローチするため、南京市において保険業協会の調解組織において調査を実施した。さらに、これまで日本でも中国でも注目されてこなかった、基層法律服務工作者による紛争解決の実態に関する調査も実施した。なお、現地調査については、海外研究協力者をお願いしている渠涛教授(北京理工大学珠海学院民商法律学院・兼中国社会科学院法学研究所研究員)、丁相順教授(中国人民大学法律院)、辛崇陽教授(中国政法大学)の他、多くの既知の関係にある研究者の協力なくしては実施することはできなかった。記して謝意を表したい。 (4)本研究の成果の一部を、法政論集(名古屋大学法学研究科・法学部紀要)にて発表した。 (5)現在研究成果の取りまとめを行っており、近く公表する予定である。
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