研究実績の概要 |
本年度は、最終年度で遅れはしたが、6月6日~15日にかけて、イタリア・ローマのBiblioteca della Camera dei deputati及びBiblioteca Apostolica Vaticanaへ資料収集に赴いた。主に二次文献を中心に調査をしたが、Ronald Syme, TacitusⅠなど国内では入手困難な文献に当たることができ、有益な成果を得ることができた。 本年度、研究成果として公表したのは、下記にも挙げた論文「レトリックと共和政(二)」である。本稿は、前年度公表した「同(一)」で打ち出したキケローのレトリックと共和政との関係に関する理解を軸にして、サッルスティウスの『カティリーナ戦記』『ユグルタ戦記』、そしてリウィウスの『ローマ建国史』第1~10巻を対象に、Daniel Kapustらの二次文献を通して検討したものである。これまでの作業と同様に、日本語訳・英訳などを手掛かりにしながらも、ラテン語原典の読解には相当時間がかかった。計画では最終年度にタキトゥスにまで到達する予定であったが、残念ながらそこまでに至らず、リウィウスに関しても、残存するテキストだけでも膨大ですべてを対象に検討することはできなかった。リウィウスに関しては今後の課題とすると共に、タキトゥスに関しては来年度、新たに基盤研究(C)に別個の独立した研究として申請するつもりである。現在、この作業に引き続いてタキトゥスの文献の検討にもすでに着手している。来年度の研究助成が得られれば、さらなる成果が期待できる。 10月6日には明治大学へ資料収集に赴いた。Siegmar Doeppの論考など郵送依頼に応じてもらえなかった貴重な文献を入手できた。 もう一つ成果としては、1月9日に成蹊大学にて小規模ながらセミナーを行ったことである。報告内容は上記二本の論考を薄めたものである。参加者少数ではあったが、有益なコメントを頂いた。
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