研究課題/領域番号 |
15K03088
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
守矢 健一 大阪市立大学, 大学院法学研究科, 教授 (00295677)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 法学 / 政治 / 法の自律 / 政治思想史 / 民事法学 / 歴史学 |
研究実績の概要 |
第一に、Savigny, F.C., Vom Beruf unsrer Zeit fuer Gesetzgebung und Rechtswissenschaft, 1814 対訳の公刊作業だが、全体の白眉を為す第4章の訳註作成に存外手間がかかり、公刊に至っていないのを、遺憾に思っている。 第二に、論文 Zum verborgenen Tacitismus im Beruf Savignys が、Savigny global 1814-2014, 2016, hg. von S. Meder et al., 145-165 として公刊された。また、本論文の延長線上に係る講演を、パリの社会科学高等研究院(EHESS)で行った。英語による本格的な講演は初めての体験だったが、ドイツ語にも日本語にもない視角の存在についていろいろ考えさせられた。 第三に、日本の近代において、民法学の歴史は、あたかも民法典の編纂とともに出発するかのような印象がともすれば持たれるが、来栖三郎の業績に即して、民事法が持つ逆説的に公法的な含意を、フィクション論にことよせて描き出す試みを行った。フライブルク大学での、2016年4月に日独法学シンポジウムでこれを口頭(ドイツ語)で報告したほか、上記EHESSでも同年5月に英語で報告した。一応、好意を以て受け止められたように錯覚している。なお、フライブルクでのシンポジウムの講演の原稿は、一応、改訂を施し、ドイツに送った。本研究も、翻って、日本にも大きな影響を与えた19世紀ドイツ私法学の公法的含意の分析に、主観的には大きく寄与するものである。 第四に、やはりEHESSで、アジアの近代法史の諸問題を、日本を例に報告する機会を得たが、国制における司法の位置づけをめぐって再びいろいろ考える機会を得て、ためになった。聞き手の反応も、好意的だったように思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主として外在的な理由によって、Beruf の翻訳刊行作業が遅れたのは、無念である。他方、Savigny研究にとって重要な、Bacon の哲学のSavignyへの影響関係という点については、学部演習の形をとって、Bacon, Advancement of Learning の第一巻を、かなり周到に精読できたことの意味が大きい。サヴィニにとってのタキトゥス主義の含意を論じた論文も公刊し得た。さらに、来栖三郎のフィクション論を、法の学問史の観点から、日本の国制における司法の役割に留意しつつ重層的に、またヨーロッパ史との比較の観点を駆使して論じたこと、それもドイツ語と英語によって行ったことは、サヴィニ研究に対しても、有益だったと、主観的には思う。
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今後の研究の推進方策 |
Beruf の翻訳刊行に力を入れる。作業に最も神経を使うので、丹念に行いたい。外在的な条件によって、本研究の進展が阻害されるのを非常に恐れるが、サヴィニにとっての人文主義の意義についての洞察を深め、まとまった仕事を公にして、とくに海外の研究者の批判を受けたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
26,288円が繰り越されたが、全体から見て、誤差の範囲内ではないかと思う。前年度は、旅費に多くが使用されたほか、ノート型パソコンが、海外渡航直前に誤作動を起こしたため、急遽、あらたなPCを購入せざるを得なかったことが、むしろ、愉快ではない予定外の支出だった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、原則に立ち戻って、基本的な研究書籍の購入に力を注ぎたい。
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