研究課題
本研究が目指した、「19世紀ドイツ市民法学の公法史的含意」の研究の成果は、近年常にそうであるが、一面から見れば不十分であり、他面から見れば、意外な成果をもたらした。2017年度から2018年度初頭にかけて、『ドイツ法入門』の改訂作業(その後、第9版として2018年に刊行)に忙殺された後、本研究の締め括りのための準備と考えて、ゲァハルト・ディルヒャーが多年に亘り『歴史法学』を巡って執筆した論文を綴じた論文集と、ハーファーカンプ及びレプゲンが編集した19世紀パンデクテン法学の性質を多角的に論じた論文集の書評を、ドイツのサヴィニ雑誌のために執筆した。ところがとくに後者の書評が、論文編集者が雑誌編集者でもあり、書評の内容に到底納得できないとしてわたくしの書評が指摘する批判点に係る詳細な論証を要求するという、予想し得ない、また予想すべきでもない事態が生じた。このため、当初の書評は、わたくしの指摘の論証を、書評の枠組を越えて充実させる必要に直面し、結果として長大なものとなり、一つの書評論文へと変貌した。この書評論文がサヴィニ雑誌に掲載されることとなったわけである。これは、神経を激越に消耗したが、文字通り得難い経験でもあった。現在ドイツの近代法史研究を牽引する者たちと四つに組んで激論を交わして、得たものは大きい。本研究との関係では要するに、19世紀ドイツ私法史を理解するには、思想史を含む国制史的背景に十分留意すべきであることを、法解釈論史と連動させて論ずることができた。さらに、こんにちの法制史学を巡る学問の状況について、洞察を深めることができたことの意義も少なくない。けれども同時に、当初予定していた、サヴィニのBeruf の翻訳の完成には至らず、こうした古典的テクストの翻訳完成の道のりの険しいことを痛感した。
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Zeitschrift der Savigny-Stiftung für Rechtsgeschichte, Germ. Abt.
巻: 136 ページ: 367-386
論究ジュリスト
巻: 29 ページ: 158-167