研究課題/領域番号 |
15K03095
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
深尾 裕造 関西学院大学, 法学部, 教授 (20135891)
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研究分担者 |
直江 眞一 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10125619)
小室 輝久 明治大学, 法学部, 准教授 (00261537)
柳井 健一 関西学院大学, 法学部, 教授 (30304471)
小野 博司 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (70460996)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マグナ・カルタ / 立憲主義 / デユー・プロセス / ホイッグ史観 / 制定法令集 / 尾崎三良 / サー・エドワード・クック / ブラックストン |
研究実績の概要 |
マグナ・カルタ800周年を迎え、2015年6月13日、関西学院大学B号館で開かれた法制史学会第67会総会において、「マグナ・カルタの800年―マグナ・カルタ神話論を越えて―と題してシンポジウムを行った。 当日は、研究代表者深尾裕造が趣旨説明と総合司会を行い、研究分担者の直江眞一教授、小室輝久准教授、小野博司准教授、柳井健一教授が各々担当分野に応じ「マグナ・カルタと中世法」、「マグナ・カルタとブラックストン」「19世紀後半日本におけるマグナ・カルタの継受」、「実定憲法としてのマグナ・カルタ」と題し報告を行った。また、研究協力者マイケル・ロバーン(LSE教授)に「サー・エドワード・クック時代のマグナ・カルタ」と題し法曹院の制定法講義写本を基に講演戴いた。関西大学の朝治啓三教授には直江報告の司会をお手伝い戴き、石井三記名古屋大学教授、三成賢次大阪大学教授からはそれぞれフランス法史、ドイツ法史の立場からコメントを戴くなどその分野の第一人者の協力を経て稔り多いシンポジウムとなった。報告要旨は配布資料集、来年度発行予定『法制史研究』66参照。質問用紙を基に議論を行ったが、十分な討論時間がとれず、未消化に終った部分もあり、今後の研究活動を通して答えていきたい。年度末の2月25日には、総括と今後の研究計画のための研究会を関西学院大学で開催した。 深尾、直江の二名はレディング大学で開催された英国法史学会(British Legal History Conference)に出席、英国におけるマグナ・カルタ研究状況を把握に努めた。 公衆向けには、2015年11月20日に、第23回関西学院大学図書館学術資料講演会で、深尾が「自由の憲章 マグナ・カルタの800年 ―法律文献を通して見る立憲主義の歴史」と題し講演を行い、同時に10月31日~11月30日にかけてマグナ・カルタ関連の特別展示の開催に協力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度がマグナ・カルタ800周年の年にあたり、法制史学会のシンポジウムとして採り上げられたために、科研に採用される以前から、会合をもって準備をはじめ、その後も共通のメール・アドレスMC800によって情報交換を行い、6月のシンポジウムを成功させることが出来た。また、関西学院大学で法制史学会が開催されマグナ・カルタ800周年シンポジウムが開催されることに合わせ、関西学院大学図書館の特別図書としてマグナ・カルタ関連図書のコレクションを収集できることになり、これによって法廷年報やその他の法書におけるマグナ・カルタの引用、印刷術導入当初の制定法令集の編纂のされ方とその中でのマグナ・カルタの位置を手に取るように理解することができるようになった。また、展示のための調査の中で松方幸次郎がイエール大学留学時に購入した記録が残る憲法史教科書の発見など、思わぬ成果があった。 また、同志社大学の戒能通弘教授の協力もあり、ロンドン大学のロバーン教授に学年度末の忙しい時期に来日戴き、我国では見ることの出来ない、スチュアート期の法曹院のマグナ・カルタ講義の写本を基礎に当時の論争の姿を生き生きと紹介して戴けたのも予想以上の成果であった。 また、マグナ・カルタの研究がジョンのマグナ・カルタやクックのマグナ・カルタ論に集中しがちであったが、ウィリアム・ブラックストンの著作『大憲章と森林憲章』(1759年)及び『釈義』(1765-69年)のテキストを検討を通し,ブラックストンの1215年マグナ・カルタに対する評価が明らかにされるとともに18世紀のイングランド社会におけるマグナ・カルタおよびブラックストンの引用の状況も検討されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
マグナ・カルタ800周年を一つの機会として、多くの新たなマグナ・カルタ関連研究文献が出版されている。Holt, Magna Carta, 3rd edition やベイカー教授編の法曹院マグナ・カルタ講義集をはじめとするこの間の研究をフォローし、我国におけるマグナ・カルタ研究の水準を高めていくことが大きな課題である。800周年のベイカー講演集やブランドのセルデン協会での記念講演、前述の英国法史学会でのマグナ・カルタ関連報告も今年度から来年度にかけて出版される予定である。これらの新たな成果を、研究分担分野毎にフォローしていく中で、各人の研究の深化を計ることが今年度の課題である。また、シンポジウムでは不十分なままに終ったブラックストンの著作を通しての、アメリカへのマグナ・カルタの影響も検討していく必要がある。 なお、小室准教授は学内業務の関係で、昨年度の英国法制史学会に参加できなかったこともあり2016年度に、ブラックストン関連資料調査・収集と合わせ、法律書店や古書店におけるマグナ・カルタ熱のもたらした影響を見てきて戴く。柳井教授は、今年度が海外調査の年であり、新たに浮上したEU離脱問題をめぐる国民投票の年にもあたり、イギリス憲法観、マグナ・カルタ問題との関連も一つのテーマとなるかも知れない。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者小室輝久准教授につき、2015年度の英国法制史学会(イギリス・レディング市)に参加する予定で旅費を計上していたが、勤務先の都合で参加できなかったため使用額を持ち越した。 また、柳井健一教授については、2015年度に予定していた文献収集を2016年度に行うこととしたため費用を持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
小室輝久准教授については、2016年度は,ブラックストンに関する史料調査のための旅費、およびブラックストンに関するアメリカの文献の購入のための物品費として使用する予定である。柳井健一教授についても文献収集のための物品費として使用する予定である。
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