現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で特に注目したのは、規範含有率の低い我が国の実定警察法を豊かにするためは如何にして、制定法準拠主義のごとく単純な法テキストに寄りかかるのではなく、またメタ理論・グランドセオリーに過大に依拠することもなく、(法治国家的警察法)規範を提示することができるかどうか、という点であった。実定法を改変することなく法体系の矛盾を解消し、法命題の一貫性・単純性を確保する解釈論的営為(解釈構成=法ドグマーティク)の機能に検討を加えたのは、ドイツ警察法では、ALRに代表される実定法の定めがプロイセン上級行政裁判所の判例と学説の協働作業を経て有意味に“解釈構成”され、これが新たな立法制定に繋がったという経緯があるため、この手法を同じく活用することができれば、実定法の定めを絶対的に重視することなく、また講学上の警察概念を中心とした悪しき体系化により実定法の定めを無視することもない、将来の立法政策に寄与するような解釈体系を示すことが可能になると考えたからである。本年度は、Krueper,Merten,Morlok(Hrsg.), An den Grenzen der Dogmatik, 2010やドイツ・ボンで行われたDogmatikに関するコロキアムの内容を記録したKirchhof, Magen, Schneider (Hrsg.), Was weiss Dogmatik? 2012を精読することにより、上記の研究結果を導き出し、これをもとに、戦前から戦後にかけての我が国の警察法令を学説(理論)が十分に統合化・体系化できなかった原因を明らかにした。本来であればドイツで研究者に対するヒアリング調査を行い、上記のような評価の妥当性について検証する予定であったが(日程の都合上叶わなかった)、上記の視点が明らかになっただけでも、十分に初期の目的は達成できたと考える。
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