研究最終年度は、伝統的警察法理論と、実務家が理論を修正しつつ実践してきた警察実務とを、前年の研究成果として明らかにした法ドグマーティクの手法を用いながら統合的体系的に把握し(法治国家的警察法体系)、これを警察法2条1項の上に基礎づけることの可否について研究を行った。 研究に当たっては、「日本警察法制の欠陥」を指摘し、ドイツ警察法理論をベースとして実務の視点から我が国の警察実体法を構築しようとした土屋正三氏(元警察大学校教授)の「警察実体法要綱試案」を分析するとともに、 2013 年に警察実務家と憲法・行政法研究者が共同で作成し「警察基本法」の制定を提唱した「『これからの安全・安心』のための犯罪対策に関する提言」(警察政策学会資料71号)の意義と課題について詳細な検討を加えた。また、「干からびた理論とバラバラな実務」(元警察庁長官)と評されることもあった警察法理論と警察実務を、どのように有機的に結び付け、実務に寄与する警察法規範を豊かにさせていくかといった論点につき、児童虐待の事例を例に検討を加えた。これらの分析の結果は、「行政法理論と実務の対話―警察・安全、都市計画・まちづくり」を統一テーマとした第17回行政法フォーラム(7月29日、於:東京大学)において、「『警察権の限界』論の再定位―親密圏内における人身の安全確保を素材として」と題して報告し、自治研究93巻12号 27-51頁において公表したところである。また行政法フォーラムの後、神奈川大学共同研究グループ(「ドメスティック・バイオレンス対応政策研究―比較としてのアジア・反照としての欧米」)からの誘いを受け、「親密圏内への警察介入の諸問題」と題する研究報告を行い(8月24日、於:北海道大学)、DV法研究者や憲法学者、ジェンダー研究者と意見交換も行った。3か年にわたる研究成果については、成果報告書に記載の通りである。
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