研究課題/領域番号 |
15K03100
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 弘通 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70257161)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 公法学 / アメリカ憲法史 / 宗教的自由 / 政教分離原則 / 憲法訴訟 / 立憲主義 |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究の第1段階として、合衆国最高裁の<信教の自由・政教分離>の諸判決を、1940年判決から初めて、時系列に沿って一つひとつ解読していく作業に取り組み、1961年判決にまで及んだ。それぞれの判決について、最高裁内部にどんな複数の立場が存在し、それぞれの立場の分岐点がどこにあるのかを解明し、法廷意見は一つの立場か複数の立場の妥協か、後者の場合どんな妥協か、の検討を行った。 本研究の第1段階の進行に伴い、本研究の第2段階――(p)個別の裁判官の<政教分離・信教の自由>判例理論を把握する作業と、(q)諸判決の法廷意見の集積である「判例法」を首尾一貫した内容のものとして読み取る試み――を、同時進行させるよう、心がけた。本年度の研究における、(p)の主な把握対象は、ブラック、フランクファータ、ダグラス、ジャクソンの諸裁判官だった。 <政教分離>に関する立場は一般に、「分離派」と「配慮派」に二分されて語られる。本年度の本研究の対象期間たる1941年~61年の合衆国判例は、明らかに「分離派」優位だった。本年度の本研究は、「分離派」の中にもいくつかの異なる考え方が存在したこと、(「分離派」優位の)「判例法」のレベルのみならず、「分離派」裁判官諸個人の考え方のレベルでも、不整合ないし矛盾が内包していたこと、などを解明した。 本年度中に公表できたのは、本研究課題の諸主題「政教分離」・「信教の自由(内心の自由)」・「立憲主義」・「宗教」に関連する研究成果にとどまった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の達成目標は、本研究の全対象期間(1941年~71年)の諸判決の半分以上の解読であった。実際には、本年度中に1961年の判決にまで及ぶことができた。そういう面では本研究はおおむね順調に進展している。 だが一方、本年度は残念ながら、諸判決そのものの検討に精一杯で、海外調査を実施できなかった。この点で、本年度までの達成度を「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の達成目標は、本年度までに及んだ1961年判決からさらに進んで、本研究の第1段階と第2段階を進行させ、本研究の対象期間(~1971年)の全ての諸判決の解読を終えることである。そのことを通じて、続く平成29年度・30年度において、本研究の第3段階――(p)主要な裁判官の<政教分離・信教の自由>判例理論が、当該裁判官の、他の憲法上の諸分野(主に表現の自由と平等原則を念頭に置く)の判例理論の全体の中に、どう位置づくか、またそれと同様に、(q)「判例法」の<政教分離・信教の自由>判例理論が、「判例法」の、他の憲法上の諸分野(主に表現の自由と平等原則)の判例理論の全体の中に、どう位置づくか、の共時的観察――を、円滑に開始することが可能になる。さらに、第1段階・第2段階・第3段階の研究の相互往復により、全体としての研究の質を高めることが可能となる。 海外調査について、これを効果的に遂行するためには、資料の所蔵状況の把握とともに、諸判決そのものの読解を通して、調査を行うに際しての問題意識を十分に先鋭化させることが重要である。ゆえに平成28年度には、何よりも上記達成目標の実現を最重視する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた国内出張を、体調不良のため見送ったことを主因とする。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額はそれほど大きくなく、来年度の物品費または旅費にあてる。
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