本研究の目的は、合衆国憲法の<政教分離・信教の自由>の規範内容とその基盤にある諸思想について、これまで充分に行われていない歴史的アプローチにより、新たなより深い理解を獲得することである。そのため本研究は、合衆国最高裁の<政教分離・信教の自由>判例の歴史的展開を、それが現代的展開を始めてから、政教分離に関する違憲審査基準を定立するまでの時期について(1940年~1971年)、追跡した。 本研究期間全体を通じて、研究対象期間の1940年から1971年までの合衆国最高裁の<政教分離・信教の自由>の全判決を時系列に沿って一つひとつ解読していくという作業を、基盤とした。その上で、次第にこれを、(p)個別の裁判官(具体的には、ブレナン・ダグラス・ブラックの各裁判官)の<政教分離・信教の自由>判例理論を把握する試みと、(q)諸判決の法廷意見の集積である「判例法」を首尾一貫した内容のものとして読み取る試み、と同時進行させて、研究を全体的に深めていくことを心がけた。 最終年度の本年度は、ブレナン裁判官の<政教分離・信教の自由>理解((p))の解明に重点を置いた。彼は、<信教の自由>法理を新たに展開させた1963年判決の法廷意見を執筆する一方で、<政教分離>に関する同年の別の判決において浩瀚な補足意見を執筆し、自身の<政教分離>理解を示している。その両者を総合的に理解することを軸とした。 本研究期間中、本研究で獲得した視座を生かして、日本国憲法の<政教分離・信教の自由>に関する歴史研究や、日本国憲法の精神的自由(19条の内心の自由、20条の信教の自由と政教分離原則)研究、また立憲主義に関する原理的考察を行う研究に関する成果等を公表した。
|