本研究は、9・11テロ以後のアメリカ合衆国ニューヨーク市を対象とし、テロ・犯罪対策などが市民的自由に及ぼす影響について考察することを目的としていた。研究の遂行上特に重点を置いたのは、同市警察本部(NYPD)の犯罪取締政策の法的評価と社会的影響の分析である。NYPDの停止・身体捜検政策は、人種・エスニシティに基づく攻撃的な取締り、すなわちレイシャル・プロファイリングというべきものであり、連邦裁判所でも違憲と断罪された。警察のかかる取締り活動は、警察と人種的マイノリティのコミュニティとの軋轢を増幅し、アメリカ社会の分断をより深刻なものとした。それは今も続いている。
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