2020年度の最大の研究成果は、他の3人の研究者との共著で『憲法Ⅱ 総論・統治』(日本評論社)という体系書を公刊したことである。この書籍は、久しぶりに上梓された本格的な総論・統治に関する体系書として、広く受け入れられた。同書のなかで、代表者は、第7章「代表民主制」、第11章「裁判所と司法権」、第12章「違憲審査制」を執筆している。特に、後二章を執筆したことにより、憲法上の権利論からの救済法への含意に関する現時点における私見を、ある程度まとまった形で示すことができた。 また、「団体の内部自治と司法権」と題する論稿を判例時報に掲載した。この論稿は、当時大法廷に係属していた岩沼市議員出席停止事件を念頭に置きながら、「部分社会の法理」と呼ばれてきた従来の判例法理の動向を、体系的に整理・検討したものである。 さらに、「合憲判断の方法」という論稿を、法学新報(畑尻剛先生古稀記念論文集)に掲載した。この論稿は、合憲限定解釈と憲法適合的解釈をおこなった最高裁判例を体系的に整理・検討したものである。 上記した二つの論文は、それぞれ前述した体系書の準備作業および補足という意味をもち、憲法上の権利論がもつ救済法への含意に関する研究の一部をなしている。 これらと並んで、弁護士出身の元最高裁判事である、大橋正春・鬼丸かおる両氏に対して、他の二人聞き手と共にインタビューを行った記録を法律時報に掲載した。救済の主体となる最高裁判事の考え方について直接に質問し、その成果を公にしたものである。学界や実務界に対して貴重な貢献となったのではないかと思っている。
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