研究実績の概要 |
本研究は、韓国が臨時政府時代の憲法以来用いている「共和国」という概念の歴史的発展過程および今日の共和国概念についての議論を機軸に、中国や日本の「共和国」についての理解がこれにどう関わっているか、また西洋の「共和国」概念が東アジアの国家思想のなかでどのように位置づけられるものであるのかを検討し、そこから東アジアにおける「国民国家」の意味を再考しようとするものである。 28年度は、20世紀初頭に日本の憲法学者、特に穂積八束と有賀長雄が日本および朝鮮や中華民国における国家思想形成に果たした役割を分析し、その一部を論文、Der Staatsbegriff der Staatsrechtslehre unter der Meiji-Verrfassung: HozumiYatsuka und Ariga Nagao, in Kazuhiro Takii/Michael Wachutka (Hrsg,), Staatsverstaendnis in Japan: Ideen und Wirklichkeit des japanischen Staates in der Moderne, Nomos 2016,133-155のなかで発表した。但し、有賀長雄が中華民国憲法案に与えた影響の分析については、同著のなかでは充分に掘り下げた検討ができておらず、いまだ分析中である。 また、当初の予定では、28年度は史的考察を中心に行う予定であったが、現地での史料収集の時間を充分にもつことができなかったため、予定を変更し、現代韓国の国民国家のあり方について、国家意思形成がどのようにして行われているかという視点からの研究を先に行った。その内容の一部は、韓国の憲法改正、および国会に関する論考の中で発表した。
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