本研究は本研究は、公共調達契約について、これをグローバル行政法および多極的行政法のなかに定位するものとして新たな位置付けを与え、新しい行政法理論の構築をめざすものである。 研究の最終年度にあたる平成29年度は、第一に、これまで調査・分析を行ってきた政府出資株式会社の資材調達契約について、これを取りまとめ、論文として公表した。本稿の最も独創的な点は、従来、行政法学も会社法学も検討してこなかった政府資株式会社の「内部法」に着目して法構造を分析した点にある。また、これと並行して、組織上、純粋に私的主体である医療職集団の内部法・自主法(以下「『法』」という。)にも着目して、これらの「法」が私的主体の活動をどのように規律しているかの分析を行い、論文として公表した。これら作業は、従来の行政法理論の限界と発展可能性を検討するためのものである。 また、平成29年度は、第二に、前年度に引き続き、諸外国における公共調達契約の調査・検討を行った。平成29年度は、とくに、ロシア、中央アジア(ウズベキスタン等)を検討対象とした。研究の第二年度にあたる平成28年度末に、市場経済移行国であり、かつ、社会主義法の母国であるロシア研究の必要性を認識することとなったたことから、ロシア、およびかつてソビエト体制にあった中央アジアの公共調達契約を調査・検討する意義は大ききと認識したことに因る。本年度の調査・分析を通して、フランスで生成し、ドイツから日本へと継受された大陸法系の行政法、そして、イギリスとアメリカで生成した英米法系の行政法という二つの行政法だけでなく、ドイツからソビエトへ継受された社会主義行政法が、中国、ベトナム、中央アジアへと継受されていく行政法の姿を把握することができた。これに加えて、政府出資株式会社の内部法を視野に入れることで、グローバル行政法、多極的行政法を考察する道筋を描くことができた。
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