研究課題/領域番号 |
15K03110
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀美 慶應義塾大学, メディア・コミュニケーション研究所, 教授 (50247475)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放送の自由 / 番組編集準則 / NHK / 忘れられる権利 / 表現の自由 |
研究実績の概要 |
今年度は、番組編集準則の合憲性、放送監督機関のあり方、NHKの国家からの自由、ローカル放送の現状と課題、インターネット上の「忘れられる権利」などについて研究を行った。 ローカル放送の現状と課題についてのヒアリングのため、2015年7月と2016年1月に富山県を放送区域とする民間放送を訪ねた。また、2015年6月と12月には大阪で開催された「メディア・ジャーナリズム研究会」に出席し、大阪の準キー局の現状と課題についてテレビ局関係者と意見交換した。2015年11月、ドイツにおいてミュンヘン市近郊にある民間放送ProSiebenSat1を訪ね、民間放送に対する監督の現状やそれが直面している課題についてヒアリングを行った。また、ケルン大学放送法研究所で放送通信法制に関係する資料収集も行った。 NHKの国家からの自由については、2015年8月、第21回日韓国際シンポジウム(日本側の主催者は日本マス・コミュニケーション学会)において研究成果を口頭発表した。放送の自由と国家権力の関係について、マスコミ倫理懇談会全国協議会7月例会に招かれ講演した。また、番組編集準則の合憲性についての論考が雑誌『世界』2016年1月号に掲載された。この他、2015年11月にBPOが放送への政治介入を批判したことや、2016年2月、総務大臣の放送法についての発言が問題視されたことなどをきっかけに、新聞に短いコメントが掲載されたほか、ラジオ番組、CS放送番組、インターネット・ニュース番組などに出演して憲法上の問題点を解説した。 2016年3月、来日中のミュンヘン大学ハーガー教授を講師に招きメディアの自由と人格権についての研究会を開催した。インターネット上の人格権保護との関係で、ドイツにおける「忘れられる権利」をめぐる議論についての論文を所属する研究所の紀要で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度、番組編集準則(放送法4条)の解釈が政治問題となったこともあり、活字メディアだけでなく、放送やインターネットの番組から出演依頼があり、それを契機に研究を深め、その成果を発表する機会も増えた。 ただし、そのせいで当初予定していたBPOによる自主規制についての憲法学的考察に取り組むことができなかった。 このほか、ドイツの議論を手がかりに、インターネット上の人格権保護、とりわけ「忘れられる権利」についての研究にも着手することができた。 計画していたことができていない面もあるが、計画以上に進んでいる論点も複数あるので、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度にNHKの国家からの自由について研究を始めたが、今後は、NHKと政治の関係についてより詳しい研究を行う予定である。公共放送という使命を課されているNHKが政治とどのように距離をとり、表現の自由を守っていくかは、放送法に基づく仕組みとその運用の問題である。NHKのインターネット利用や、受信料財源のあり方も視野に入れつつ研究を進めたい。 また、これと並行して、引き続き番組編集準則の合憲性、監督機関のあり方、ローカル放送の課題についても折に触れて研究を行う。また、放送に限定せず、インターネット上の表現の自由にかかわる問題にも取り組む。 研究方法としては、日本やドイツの文献収集と分析に加えて、現状把握のためのヒアリングを行うとともに、内外の研究者や実務家などから専門知識の提供を受け、意見交換を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2010年度に購入したパソコンの性能が現在のインターネットのスピードに迅速に対応できなくなっているため、2015年度中に新しいパソコンを購入する予定であった。ところが、2015年11月の時点で、2016年3月にミュンヘン大学ハーガー教授が別の財源により来日することが明らかとなったため、研究会に同教授を講師としてお招きすることとし、謝金に加えて、滞在費を支出した。このため、パソコン購入のための財源が少し不足することになり、購入を2016年度に延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度に配分される予定の研究費と合算して、本研究のために使用するパソコン(デスクトップ)を購入する予定。
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