本研究は、「番組編集準則の合憲性」、「放送監督機関のあり方」、「NHKの国家からの自由」、「ローカル放送の現状と課題」、「インターネット上の表現の自由とその限界」などについて検討した。このうち、「番組編集準則の合憲性」については、平成27年からこの問題が憲法上の問題にとどまらず、政治問題に発展したこともあり、その成果を学会で口頭発表したり、拙著『放送の自由〔増補第2版〕』(2017年)や論文として活字で公表しただけでなく、新聞へのコメント、放送番組・インターネットで配信される報道番組への出演を通じて問題を解説する機会を得た。「政治的公平」「報道は事実をまげない」などの番組に対する内容規制は、総務大臣が放送免許の権限を持つ日本では、法的拘束力のない倫理規定と解すべきで、政府がそのような解釈を採用しない場合には、民間放送との関係で番組編集準則は放送法から削除されるべきだとの結論を得た。「NHKの国家からの自由」については、共編著『放送制度概論』(2017年)の分担執筆のなかで、放送法がNHKの国家からの自由のためにどのような工夫を採用しているかについて解説した。また、2017年12月6日、最高裁大法廷が受信料制度の意義やその合憲性についての判決を下したことから、新聞を通じてコメントを公表したほか、2018年1月に研究会を開催し、他の研究者や実務家とこの判決について検討した。その成果は、平成30年5月に月刊誌に掲載される論文として公表される予定である。「ローカル放送の現状と課題」については、富山、岡山、大分の民間放送で聞き取り調査を行い、理解を深めた。 「インターネット上の表現の自由とその限界」に関連して、人格的利益を根拠とする検索結果や記事の削除の問題に加えて、SNSを通じてインターネット上を流通する違法情報についてドイツのSNS対策法(2017年制定)を手がかりに検討した。
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