最終年度である平成30年度は、本研究課題の目的である、結社の自由という憲法原理を踏まえた団体規制法の体系構築作業の一環として、宗教団体規制の日仏比較を行った。 フランスでは裁判所が宣告する司法的解散制度と並んで、行政が宣告する行政的解散制度が存在している。行政的解散制度は伝統的には暴力的団体に適用されてきたが、2015年パリ同時多発テロ事件以後は、テロとの関連性からイスラム原理主義団体への適用が多数みられる。しかしその適用事例を見ると、行政による拡大解釈による解散例が見られる一方で、行政裁判所であるコンセイユ・デタが事後的に違法と判断している例があり、規制とその統制のあり方について特徴ある動きを見せていることが明らかになった。 日本でも団体規制法として破壊活動防止法による解散指定制度があるが、いまだ適用された例はない。むしろ日本の憲法学では、違憲論が根強く主張されている。しかし、フランス団体規制法と比べると、日本の団体規制の度合いが特段に強いという訳ではなく、むしろ破防法の解散指定要件の方が厳格であり、だからこそ適用が難しいのではないかという認識に至った。そこで本研究では、フランス法の知見に照らして、日本の団体規制法を批判的に見直し、その合理化のための視座を示しただけでなく、具体的な論点についての検討も行った。 また、団体規制の必要は緊急事態において増大する。この点についても、パリ同時多発テロ事件以後に強化された緊急事態法による団体規制の内容と適用・運用を参考にすることにより、平時だけでなく、非常時を視野に入れた団体規制法のあり方を探ることができたと考えている。
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