平成29年度は、平成27年度および平成28年度の研究実績を基礎として、大きく以下の2つの研究を行った。 第1に、平成28年度中に、各地方公共団体に設置された行政不服審査会(行政不服審査法81条)が各地方公共団体の行政活動に及ぼすことが予測されるインパクトについて研究を行ったが、平成29年度は、これに引き続き、行政不服審査会が各地方公共団体の行政活動にインパクトを及ぼすことを行政事件訴訟において裁判所が保障するカギになるものと考えられる「裁決固有の瑕疵」の概念(行政事件訴訟法10条2項を参照)について研究を行った。この研究の成果については、行政訴訟研究会(2017年9月29日(金)、於東京地方裁判所)において、研究代表者が「裁決固有の瑕疵の可能性」というテーマで報告を行い、出席者と意見交換を行った。 第2に、平成28年度中に、平成27年度の第1回研究会や英国エセックス大学のモーリス・サンキン(Maurice Sunkin)教授、バーダ・ボンディ(Varda Bondy)氏との意見交換において示唆のあった具体的なインパクト研究として、公務員の懲戒事例に関する行政事件の判決が各地方公共団体の職員や行政活動に与えるインパクトについて分析するために必要な資料の収集を行ったが、平成29年度は、これを継続するとともに、それと対比する形で、税務訴訟における判決が主として国の職員や行政活動に与えるインパクトについて分析するために必要となる資料の収集・分析を行った。
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