安全保障がインテリジェンスを核とする前年の所見を踏まえて、インテリジェンスの手法とそれぞれの法との関係を研究した。とりわけ、隠密行動(Covert Action(CA))にかんして、アメリカ法との関係を研究した。CAが情報収集を核とする一般的なインテリジェンスとは、秘密裏であることは共有されるも、破壊活動など直接行動を伴うものである点で異質であること、それがアメリカにおいては独立戦争時からの歴史をもつ伝統的なインテリジェンス手段であることを明らかにする。そのうえで、法的には1947年の国家安全保障法で定義づけされるも、大統領の専権ということで秘密が極度に保護され、要人の暗殺など恣意的な行動が目に余るようになり、議会の統制が強化されるようになる。それはまず立法であり、制定法でCAの決定や行動の中身に大きな規制が及ぶようになる。大統領が承認したもののみ認められ、そのためにインテリジェンス機関が共和的に関与する形となり、予算も制度的なプロセスを踏むように設定される。議会の委員会による統制も充実化させるようになる。こうした展開は冷戦構造のなかでの展開が契機となっているけれども、イランコントラ事件がCAでは重要な役割を果たしており、同事件の意義や影響を検証した。またCAのアカウンタビリティや統制という点では、国際法による規制やチェックも重要であり、国際法がCAにどのようにかかわってくるのか、アメリカは国際法との整合性を保つためにどのような政策を打ち出しているのかを研究した。CAは安全保障の責めを負う大統領権限であり、CAをめぐって大統領権限の限界や統制を憲法学的に考察することで、CAを安全保障法との関係の論点を提示した。
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