研究課題/領域番号 |
15K03121
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
松原 有里 明治大学, 商学部, 教授 (30436505)
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研究分担者 |
内海 朋子 横浜国立大学, その他の研究科, 教授 (10365041)
萬澤 陽子 専修大学, 法学部, 講師 (50434204)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 租税刑法(処罰法) / 行政罰 / イタリア法 / ドイツ租税法 / ドイツ刑法(刑事訴訟法) / EU法 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、ドイツとイタリアを中心に欧州(EU)各国の租税刑法(処罰法)と租税行政罰との関係について、現地(ハイデルベルク大・ミュンヘン大・ミラノ大他)での資料収集およびヒアリングを中心に比較法の観点から研究を行った。合わせて、『The European Fight against Tax Fraud, Tax Evasion and Tax Avoidance』と題してイタリアの租税処罰法と行政罰との関係に関する講演会を、年度末にミラノ大学法学部のジュゼッペ・マリーノミラノ教授をお呼びして明治大学で開催し、英語での講演会を行なうとともに、講演会に出席したわが国の官・民(の実務家)および学会関係者とのディスカッションも行う試みを行い、相互交流を図った。イタリアでのマネーロンダリング対策としての関連租税法規の強化についての現状を、EU法との関係にもふれつつ考察することができた。同講演会の講演録は、平成28年5月現在、翻訳作業中である。
また、これ以前の科研費基盤研究cで招聘したルドルフ・メリングホフ元ドイツ憲法裁判所判事・現ドイツ連邦財政裁判所長官の平成27年年3月の明治大学での講演会の講演録『租税徴収手続と租税処罰手続の原則と限界』の全訳も平成27年年夏に完成し、平成28年年1月に公刊物として刊行することができた。従来、租税法の研究者も刑事法(特に刑事訴訟法)の研究者もあまり踏み入れることのなかった領域であり、裁判官をはじめとする法曹実務家との交流も含めて、本研究に関するわが国での刑法学者や行政法学者との交流を深めることができた。
これらの研究によって、現在わが国でも改正が議論されている(そして一部は改正法案が国会を通った)わが国の司法取引制度や国税通則法・国税犯則法の今後についても何等かの示唆が与えられたのではないかと思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にも関わらず、現地での資料収集もしくはヒアリングのみならず、海外からの研究者の招へい(1回)およびその講演会を明大で行うことができ、また、講演録についても順次訳稿を公刊(1回)しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、欧州全体からの視点および独や伊といった大陸法に対するイギリス法との比較にも研究対象を広げて研究を行う。特に、租税行政罰の中でもGAARと呼ばれる悪質な国際的租税回避に対する一般的否認規定の導入の可否について、その実効性も含めて理論的な考察を行いたいと考えている。合わせて、昨年度からコンタクトをしているドイツのハイデルベルク大、ミュンヘン大、オーストリアのウィーン経済大(WU)他の租税法研究所との交流も続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者である松原の残額分205,827円は、年度末には全額支出していたものの、経理処理が間に合わず、繰り越しているものであり、研究分担者の内海の残額分87,034円は、昨年度海外出張の予定が今年の夏に延期されたため、残っているものである。また、研究分担者の萬澤の残額分364,000円は、萬澤今年2月に出産したため、昨年度後期に予定していた国内・海外出張をすべて取りやめたために、翌年度に繰り越されたものである。
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次年度使用額の使用計画 |
内海は、今夏に予定している調査研究のためのドイツ出張に残額を使用する予定であり、また萬澤は今年後期の産休・育休明けから順次使用する予定である。
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